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『稲盛和夫一日一言』 4月28日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 4月28日(日)は、「大家族主義で経営する」です。

ポイント:経営者と労働者という対立関係ではなく、あたかも親子や兄弟のような関係で、従業員と苦楽を共にしていく。そのような関係を「大家族主義」として、会社経営のベースとする。

 2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)の中で、「大家族主義」について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 京セラをつくったとき、私は従業員と家族のような関係でありたいと思いました。例えば、私が育った鹿児島には両親がいて、七人の兄弟がいましたが、その家族のような関係です。また、私は結婚してすぐに会社をつくりましたので、新しくできた自分の家族と同じくらいの関係でありたい。

 経営のケの字も知らなかった私でしたが、どうもそこに経営の原点がありそうだ、従業員とそこまでの関係でなければ、本当の意味での強い会社にはならないだろうと、まずそう思ったのです。

 これくらいの給料をくれるならその給料分だけ働こうという従業員がいてもいいのかもしれません。しかし、私と一緒に経営にあたってくれる幹部社員には、本当の親子や兄弟ぐらいの関係にまでなってほしい。
 そう考えたのは、私自身が弱虫だったからです。幹部社員には何とか片腕になって私を支えてほしいと思うものですから、家族のような関係の人がいなければ経営はできないと思ったわけです。

 しかし、経営者と従業員というふうに考えると、何かドライな感じがして、私が思う家族のような関係にはとてもなりそうにありません。
 そこで、京セラをつくってまだ何も分かっていなかったときに、私は「ウチの会社は家族主義で経営します。家族主義といっても大家族主義で経営します。なぜ大家族主義なのかというと、私は家族みたいな関係で、この会社をつくりたいのです。ただドライに、給料を払うからそれに見合う仕事をしてほしいという関係ではなく、親子や兄弟といった家族のような関係の会社にしたいと思っています」と、従業員に訴えました。

 家族のような関係を従業員に求めようと思うと、まず私自身が従業員に対して家族のような愛情を持って接しなければなりません。
 一方的に、「私を守ってくれ」と言っても、守ってくれるはずがありません。私自身が親兄弟に接するのと同じような気持ちで十分に接しなければ、従業員だってそうなってくれるはずがないと思ったわけです。

 京セラの経営理念に「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ということを謳ったのは、そうして悩んでいたときに求心力となるものがほしいと思ったからです。そして従業員の会社に対する求心力を増していくために、次のように訴えました。

 「ウチの会社は、私が成功し、お金持ちになるためにつくったのではありません。この会社に一期一会で集まっていただいた従業員の皆さんが、物心両面で幸せになるためにつくったのです。
 従業員というのは業に携わる人、仕事に従う人ですから、私も含みます。私も含む全従業員が幸せになるために、この会社をつくったのです。他には何もありません。
 稲盛家が成功して稲盛家がお金持ちになって、従業員はただ利用されるだけというものではありません。京セラという会社がうまくいくということは、加わった全従業員が幸せになっていくことなのです」。

 私はそう訴えて、率先垂範、必死で仕事を進めるのと同時に、従業員とのコミュニケーションをとろうと、いろいろな機会をつくって接点を持ち、理解し合えるように努めていきました。(要約)

 同著「従業員と家族のような関係を築く」の項の冒頭には、次のように記されています。

 従業員の心をつかまえているか。調子のいいときは、給料も出し、調子のいいことも言えるから、誰でもついてくる。大事なのは、業績が悪くなったときに支えてくれる人間がいるかどうかだ。

 コミュニケーションが大事なのは、経営者と従業員の間に限った話ではありません。夫婦の間、子どもとの間、先生と生徒の間、グループのリーダーとメンバーの間等々。
 いずれもお互いを理解し合うには、コミュニケーションが不可欠です。今でも京セラで行われているコンパも、互いの接点を増やす絶好の機会となっています。

 コロナ禍を経て、「飲みニケーション」はもう古い、不要という意識を持つ人が多数派となった、との意識調査結果が報告されていましたが、アルコールの有無にかかわらず、親密なコミュニケーションが良好な職場関係を築くベースになり得るということだけは間違いないのではないでしょうか。


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