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『稲盛和夫一日一言』 12月25日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 12月25日(月)は、「苦しき世の生き方」です。

ポイント:苦労を「魂を磨くための試練」ととらえ、己の人間性を鍛えるための絶好の機会としていくことで、限られた人生をほんとうに自分のものとして生きていける。

 2004年発刊の『君の思いは必ず実現する 二十一世紀の子供たちへ』(稲盛和夫著 財界研究所)「第五章 不運にへこたれるな」の中で、試練の受け止め方について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人生の目的は、いい人間になることにあります。いい人間とは、美しい心を持った人です。美しい心とは、思いやりの心です。私はこの「思いやり」こそが大切だと思っています。
 この思いやりということを言い換えれば、それは「優しさ」です。優しい心、思いやりの心、美しい心を持った人になることが人生の目的なのです。

 その人がどのくらい立派な人間になったかを試すために、この自然は、この宇宙は、また神様は、私たちにいろいろな試練を与えるわけです。そして、その試練とは、災難や不幸だけでなく、成功することもそうなのです。

 私は若いときに、多くの失敗と挫折を繰り返してきました。一方で、若いときに成功を収め、順風満帆の人生を送るかに見える人もいます。
 しかしその成功さえも、その人にとっては試練なのです。神様は、成功体験を与えてみて、その人がどう変化していくのかを見ておられます。

 私が郷里の鹿児島で行われた小学校の同窓会に出席したときのことです。再会を楽しんでワイワイ話をしているときに、当時級長だった人が私に次のような話をしてくれました。
 彼は、私が受験して落ちた鹿児島一中に行ったのですが、彼が一中の制服を着て登校している途中で私とすれ違ったとき、私がさもうらめしそうに彼をにらみつけたと言うのです。私にはそんな記憶はありませんでしたが、そんなこともあったかもしれないな、と思いました。

 
 当時の私は、「一中を受験しても落ちるし、何で自分はこんなに運が悪いのだろう。どうして、自分がこんな目に遭わなければならないか」と思っていました。ですから、頭もよく、いい学校に行けた彼を見て、うらやましいなと思っていたに違いありません。

 その後、彼は戦争がきっかけでグレてしまったそうですが、「これではいけないと気づいて勉強し直し、今に至っている」と話してくれました。子供のころの小さな成功が、彼のその後の人生を少し狂わせてしまったのかもしれません。

 今の話からもわかるように、若いときにいいことがあっても決して驕らず、また災難や挫折があっても、へこたれてはいけません。なぜなら、それは神様が与えてくれた試練だからです。神様は、私たちに災難や幸運を与え、それを糧にして、これからの人生を生きなさい、と言っているのです。

 ですから大切なのは、失敗にしろ成功にしろ、それをどういうふうに受け取るかということです。試練を真正面から受け止め、それをバネにさらに努力を重ねていくことが、自分をつくっていくということなのです。
(要約)

 今日の一言には、「生きていくことは苦しいことのほうが多いものです。時に、なぜ自分だけがこんな苦労をするのかと、神や仏を恨みたくなることもあるでしょう。しかし、その苦労は魂を磨くための試練だと考える必要があるのです」とあります。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の「きれいな心で願望を抱く」の項で、「因果応報は成立する」として、名誉会長は次のように説かれています。

 仏陀は「心に描いた通りになる」とおっしゃっていますが、これほど証明しにくいものはありません。
 少しぐらいきれいな心で願ったからといって、「すべてがうまくいくはずがない」と誰もがそう思うでしょう。実際には、なかなか思った通りにはいかないし、むしろ心がけの悪い人の方がうまくいっているというケースさえ、皆さんはよく目にされていると思います。

 しかし、「因果応報」と言われるように、人生や経営には、心に思ったことが寸分違わず現れてきます。ただ、スパンが長い。大体三十年ぐらいのスパンで見れば帳尻は合ってくるはずです。しかし、ものによっては三十年たっても結果が出ない、ときには死ぬまで出ないこともあるものですから、「心に描いた通りの結果になります」と言われても、誰もなかなかそうしたことに関心が持てないのです。(要約)

 何の努力もしないのは論外ですが、試練を己の人間性を鍛えるための絶好のチャンスととらえて一生懸命努力したとしても、それがすぐに良い結果には結びつかないかもしれません。しかし、長い目で見ればいつか必ずその努力は何らかの形で報われるはずだ、と信じることができるかどうか、そこが大事なところではないかと思います。

 「信じる者は救われる」
 さまざまな解釈のある言葉ではありますが、試練はチャンスだと信じることで、困難にも果敢に立ち向かっていける勇気を授かることができるのではないでしょうか。


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