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『稲盛和夫一日一言』 8月31日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 8月31日(木)は、「二十一世紀の経営者」です。

ポイント:何に頼ることもなく、何にとらわれることもなく、独立自尊の精神を持ち、自らの力で自らの道を切り拓いていける人。誰よりも柔軟で、自由な発想でビジネスの展開ができる人。それが新しい事業を大きく育てることのできるこれからの経営者。

 2001年発刊の『リーダーの資質 混迷の時代にどう決断するか』(稲盛和夫責任編集 PHP研究所)の序章部分で、「リーダーシップとは何か」「リーダーとはどうあるべきか」との命題に対して、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 二十世紀は、急速な科学技術の進展により、先進国を中心に物質的な豊かさを広範に享受できた世紀であった。しかし、二度にわたる世界大戦をはじめ、世界各地で多くの戦乱、紛争が生じ、また環境破壊や富の偏在など新たな課題も生まれ、人類が多大な苦しみを味わった時代でもあった。

 新たに迎えた二十一世紀は、このような問題が解決され、世界中の人々が平和を享受し、物心両面において真に幸福になれる世紀であってほしいと願っている。そのためには、政治や企業活動などあらゆる分野で、信頼され、尊敬される素晴らしいリーダーが輩出することが不可欠であろう。
 なぜなら、歴史を紐解けば明らかなように、国家であれ、企業であれ、あらゆる集団の盛衰は、そのリーダーによって決まるからである。

 中国の古典には「一国は一人を以て興り、一人を以て亡ぶ」という言葉がある。また米国を独立させ、現在の繫栄をもたらすのに決定的な役割を果たしたのは、すばらしい人格者であった初代大統領ジョージ・ワシントンであった。日本にも、明治維新という偉業を成し遂げ、近代日本発展の端緒を開いた西郷隆盛という傑出したリーダーが存在した。

 西郷はリーダーのあるべき姿として、次のような言葉を残している。
 「己を愛するは善からぬことの第一也。修業の出来ぬも、事の成らぬも、過を改むることの出来ぬも、功に伐(ほこ)り驕慢の生じるも、皆な自ら愛するが為なれば、決して己を愛せぬもの也」

 一方歴史の中には、自らの欲望を肥大化させ、その赴くままに人々を扇動し、他国を侵略することによって世界に戦乱や貧困をもたらし、集団を不幸に陥れるリーダーも数多く存在している。
 民族、国家の興亡のみならず、企業の盛衰もリーダーとともにある、といっても過言ではない。
(要約)

 二十一世紀もまもなく四半世紀が経過しようとしていますが、残念ながら、名誉会長が総括された二十世紀の状況が好転する兆しは見えません。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第5巻 リーダーのあるべき姿』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)のカバーのそでには、次のような文章が書かれています。

 鍛え抜かれた不動の「人格」を確立せよ
  組織の長たる者の考え方が
  自由でいいというわけでは決してありません。
  集団を幸せにするために、
  すばらしい「考え方」をもたなければならないのです。
  どんなに環境が変わろうと、
  鍛え抜かれた不動の「人格」を確立していなければ、
  真のリーダーたりえないのです。

 京セラ在籍40年の間、名誉会長をはじめ、数多くの経営トップや上司と接してきましたが、企業や組織を預かるリーダーには、常に人間として正しい道にしたがい、時間の経過に伴って変節するといったことのない「強固な人格」を持った人がふさわしいと感じてきました。(自戒の念を込めて・・)

 やはり、権力の座についた途端、傲慢に陥るようなリーダーが選ばれているようでは、その企業、集団は不幸な目に遭うのは目に見えています。

 今日の一言にある、独立自尊の精神、自由で柔軟な発想といったものも、リーダーに求められる強固な人格が備わっていてこそ、その真価を発揮するのではないでしょうか。


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