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『稲盛和夫一日一言』 1月7日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 1月7日(日)は、「徳に基づく経営」です。

ポイント:企業経営とは永遠に繁栄を目指すものでなければならない。そのためには、「徳に基づく経営」を進めるしか方法はない。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第5巻 リーダーのあるべき姿』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)収録の「2007年 中日経営者交流フォーラム講演:徳に基づく経営」において、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 本日の講演では、私の半世紀にわたる経営体験をベースとして、「徳に基づく経営」と題してお話を進めさせていただきます。

 組織をまとめていくには、政治や外交の世界にみられるように、「力」で治めていく方法と、「徳」で治めていく方法があります。言葉を換えれば、集団の統治には、力に基づく「覇道(はどう)」と、徳に基づく「王道」という二通りの方法があるわけです。

 中国革命の父と呼ばれる孫文(そんぶん)は、1924年神戸を訪れ、次のような講演を行っています。
 「西洋の物質文明は科学の文明であり、武力の文明となってアジアを圧迫しているが、それは中国で昔からいわれている『覇道』の文明である。しかし、東洋にはそれより優れた『王道』の文化がある。そして、王道の文化の本質は「道徳」「仁義」である。
 あなたがた日本民族は、欧米の覇道の文化を取り入れると同時に、アジアの王道文化の本質ももっている。これからのち、日本が世界の文化の前途に対して、西洋の覇道の番犬となるのか、東洋の王道の干城(かんじょう/盾と城の意)となるのか、あなたがた日本国民がよく考え、慎重に選ぶことにかかっている」

 残念ながら、日本はその後一瀉千里(いっしゃせんり)に覇道を突き進み、ついには1945年の無条件降伏を迎えるわけです。

 ここで孫文が説いた「王道」とは、「徳」に基づいた国家政策のことです。「徳」とは、古来中国では、「仁」「義」「礼」という三つの言葉で表されていました。
 「仁」とは慈(いつく)しみの心、「義」とは道理に適(かな)うこと、「礼」とは礼節を弁(わきま)えていることで、この三つを備えた人を「徳のある人」とも呼んできました。つまり、「徳で治める」とは、高い人間性で集団を統治していくことを意味しています。

 企業経営において、長く繁栄を続ける、まさに「調和のとれた企業」をつくりあげていこうとするならば、そうした「徳」で治めていくしか道はない、と私は考えています。
 従業員をして経営者を尊敬せしめる、そのような経営者のもつ「徳」に基づく経営こそが、調和のとれた企業をつくるための最も有効で確実な道なのです。

 権力によって人間を抑圧したり、金銭によって人間の欲望をそそるような経営で、「調和のとれた企業」がつくれるはずはありません。そのような経営は一時的には成功を収めることはできたとしても、いつか社員の離反を招き、破綻に至るはずです。

 企業経営は永遠に繁栄を目指すものでなければならず、それには「徳に基づく経営」を進めるしか方法はない、と私は信じています。(要約)

 ロシアによるウクライナ侵攻は、収束する様子もなく越年し、イスラエル、パレスチナでは凄惨な対立の歴史が繰り返されています。

 新年の報道番組では、中国、ロシア、北朝鮮などに代表される、政治権力を一部の指導者が独占する、いわゆる権威主義的な国家と、欧米などの民主主義国家との戦いが激化の一途にあるなか、民主主義が後退していることに関する危機感が取り沙汰されています。
 実際、自由で民主的なのは60の国と地域であり、逆に非民主的とされるのは119の国と地域に上るという分析もあるようです。

 今日の一言にある「権力によって人間を管理し、また金銭によって人間の欲望をそそるような経営(統治)が長続きするはずはない。一時的に成功を収めることができたとしても、いつか人心の離反を招き、必ず破滅に至るはずです」という言葉を信じ、私たち一人一人が「徳」を備え、高い人間性をもって生きていけるよう、さらに精進しなければと思っています。


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