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『稲盛和夫一日一言』 6月21日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月21日(金)は、「一芸に秀でる」です。

ポイント:自分の仕事を究めるということは、自らの人間性をも素晴らしいものにつくり上げることに通じている。一芸に秀でた人、物事の本質を究めた人は、万般あらゆるものに通じるようになる。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSION- 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、ひとつのことに打ち込むことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 ひとつのことに打ち込んで、それを究めれば、人生の真理を見い出し、森羅万象を理解することすらできるようになると思います。

 例えば、長年仕事に打ち込み、何か卓越した技術を習得した人は、人生について素晴らしい話を聞かせてくれます。また、修行を重ね、人格を磨いてきたお坊さんは、教義に無関係な分野の話をされても、素晴らしい真理を説かれます。絵画、著述等、なんでも一芸を究めた人の話には、同様の含蓄があります。

 残念ながら、学校を卒業したばかりの若い人たちは、地味な仕事ばかりさせられていると、それに辛抱できなくなります。自分の仕事にどのような意義があるのだろうかと疑問に思い、他のもっと責任のある仕事をさせてほしいと言い出します。しかし、そういう人は何をしても決して満足することはないのです。

 もし広くて浅い知識しかなければ、それは何も知らないことと同じです。ひとつの技や分野を深く探究することによって、すべてを知ることができます。
 ひとつのことを究めるということは、すべてを理解するということです。すべてのものの奥深くにこそ、真理があるのです。
(要約)

 2015年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第1巻 技術開発に賭ける』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、専門分野を究めていくことの大切さについて、名誉会長は次のように説かれています。

 「果たして、日本民族に画期的なイノベーションを起こす素地があるのか」といった議論がなされることがあります。
 農耕民族であった日本人は、村単位での共同農耕の発達に見られるように、皆で調和を図りながら行う作業には長けていても、突拍子もなく飛躍した発想や単独行動をとるといったことはそう得意ではないように思います。

 ですから今後とも、外から取り入れた新たなベースに対して改良改善を加え、さらに素晴らしいものに仕上げていくのが得意だという民族の特性を生かして、自分の専門性を深めていく、つまり専門化を図っていくべきではないかと考えています。

 専門化を図るということは、自分がその分野で生きていくために、その専門の道、分野を鋭角的に深く掘り下げ、究めていくということです。
 ベースとなる技術を基軸に置きながらも、その時々のニーズに応えながら、一歩一歩の積み重ねを続けていく。それは地味な展開になるかもしれませんが、それを何ステップか続けた後に振り返ってみれば、非常に大きなイノベーションを行ったのと同じような成果が得られている、ということになるでしょう。

 時間は有限ですから、一人の人間がいろいろな分野をパラレルに究めていくことは容易なことではありません。世界中で誰にも負けないという自信を持つためには、まずは専門化し、そこを鋭角的に掘り下げていく。
 同時に、「自分はこの専門でしか生きる道はない」というぐらいの意識にまで自らを追い込むことも必要です。それは仕事であっても芸であっても、またスポーツの世界であっても同様です。

 それは、自分の専門に対してハングリーな状態でなければならないということです。そういう状態をつくっていくには、それぞれの人がそう悟るしかないと私は思っています。
 この道を生涯の道として歩いていく。そうした意識は、研究開発職に限らず、管理職や間接業務に携わる人まで、あらゆる業種に求めるべきものです。

 「それぞれの専門の道からは逃れられない」
 そういう状況をつくっていく。そうすることが、一芸に秀で、万般に通じる人の輩出につながっていくのではないでしょうか。
(要約)

 今日の一言には、「私はある宮大工の方が対談されているのをテレビで見て、感心させられたことがありました。齢は七十歳くらいでしょうか、小学校を出てからずっと宮大工としてつとめてこられた方が、大学の哲学の先生と対談をしておられたのですが、先生もタジタジになるぐらい、素晴らしい話をされていました。大工の仕事を究めるということは、ただ単にカンナをかけて素晴らしい建物を造れるようになるだけではなく、自らの人間性をも素晴らしいものにつくり上げることに通じているのです」とあります。

 「私はこの道を究めました」と胸を張れるような人はほんの一握りかもしれませんが、目の前のことに一生懸命に打ち込むことで、わずかずつではあっても物事を前進させていくといった経験を積み重ねることで、瞬時に物事の本質にせまっていけるだけの鋭い感性を身につけていきたいものです。


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