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『稲盛和夫一日一言』 3月27日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3月27日(水)は、「実体験が財産となる」です。

ポイント:偉大な仕事をなし得る知恵は、経験を積むことによってしか得られない。自らが身体を張って取り組んだ実体験こそが、最も貴(とうと)い財産となる。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)「知識より体得を重視する」の項で、経験に裏打ちされた実体験によってしか得られないものがあるとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 「知っている」ということと「できる」ということは全く別です。
 例えば、セラミックを焼成するときの収縮率の予測一つをとってみても、この事実はよく分かります。文献などで得た知識に基づいて、同じ条件で焼成を行なったつもりでも、実際に得られる結果はその都度違ってくるということがよくあります。

 本のうえでの知識や理屈と実際に起こる現象とは違うのです。経験に裏打ちされた、つまり体得したことによってしか、本物を得ることはできません。このことは、営業部門であれ管理部門であれ全く同じで、そうしたベースがあってこそ、初めて知識や理論が生きてくるのです。

 「知識より体得を重視する」とは、人から教わったり、本などから得た知識よりも、自らの身体で得たものを重視するという意味です。

 例えば、セラミックを焼成する場合、文献に「何度で焼成する」と記述されていたとしても、いきなりその温度に設定した焼成炉の中に製品を入れてしまえば、粉々に割れてしまうでしょう。
 実際には、最初は低い温度のところに入炉し、それから徐々に温度を上げていくのですが、それではどの程度のスピードで上げていけばいいのかといったノウハウに近い部分については記載されていないことがほとんどです。ですから実際には、自ら実験を繰り返しながら、徐々に経験を積んで体得していくしかないわけです。

 学校で専門的な教育を受けてきた人なら、文献等に書いてあることはある程度理解できるはずです。ですから、「このセラミックスは、こういう成分の原料を混合して成形し、この温度で焼成することで合成できる」と、書いてある内容を説明することはできるでしょう。
 しかしながら先ほども述べたように、「知っている」ということと、「実際にできる」ということは別物なのです。

 世の中はどんどん進化していて、さまざまな情報が溢れていますから、みんな頭でっかちになっています。そのため、理屈を知ってるだけで、あたかもできるかの如く思い込んでいる。
 しかし、それは錯覚に過ぎないのです。そういう人間には、実践を通じて理論を裏打ちさせることが必要です。

 例えば営業マンであれば、「あなたがこうすれば売れると言うなら、実際に売ってみなさい。そして、自分の理論の正当性を証明して見せなさい」と言って、実践させなければなりません。
 自分でやってみて実際に売れることを体得できれば、もともと理論は持っているわけですから、まさに「鬼に金棒」といった状態になるはずです。

 これはコンサルタントから経営ノウハウを教わるといった場合にも言えることです。指導を受けるのであれば、その人にまず実績があるかどうかを確認する。実績のないコンサルタントなど、何の価値もありません。
 きれい事ばかり口にする人ではなく、実際にやったことのある人、自分の身体で分かっている人の話を聞くのなら、それは意味のあることだと思います。
(要約)

 私も京セラで新規セラミック材料の研究開発に従事していましたから、名誉会長が例にあげられているセラミックスの焼成については、たいへん苦労しました。
 一度焼成したサンプルは元には戻りませんから、サンプルをたくさん準備して、条件を振りながら実験を繰り返していく以外、なかなか有効な手段はありません。
 もちろん、事前に徹底的に文献調査を行い、目指すべき目標特性を達成するために必要な諸条件をピックアップ、整理してから実験に臨むのですが、いかんせん、実際にやってみなければわからない、またはやってみても説明がつかないような現象が次々と出てきて、パニックになるといったことも数え切れないほどありました。

 だからこそ、「知識より体得を重視する」「実体験が財産になる」という言葉は、まさにその通りだと実感してきました。

 「知っていること」と「できること」は違います。
 「できること」を一つずつ増やしていくこと。それが目の前の課題を解決するための最も確実な方法なのかもしれません。


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