見出し画像

『稲盛和夫一日一言』 11月3日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月3日(金)は、「苦労の代償」です。

ポイント:経営者とは、割の合わない仕事かもしれない。しかし、多くの社員が経営者を信頼し、尊敬してついてきてくれる、そうした金銭には代えがたい喜びや感謝を受けることこそが、その苦労に値する代償ではないか。

 2022年発刊の『経営12ヵ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著 日経BP/日本経済新聞出版)の中で、経営者が目指すべき「利他の経営」について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私は京セラという会社をつくっていただき、経営者の道を歩きはじめたときから、「商いをする人、企業経営者というのは、何かうさんくさいことをしているのではないか」という目で人々から見られているという思いを抱いていました。

 しかし、江戸時代、商人道を説いた石田梅岩の「まことの商売は、先も立ち、我も立つことを思うなり」という言葉に救われる思いがしました。
 つまり、「本当の商売というものは、商売をする相手もうまくいき、自分自身もうまくいくというものでなければならない。自分だけ儲かればよいというものではない」と説かれていたわけです。

 現代でも、商売をする人、経営者がそう思われるのは、資本主義社会のなかでの株式会社の位置付けにある、と私は思っています。
 資本主義社会では、株式会社は株主のものであり、株式価値を最大化することが会社経営の目的であると考えられています。そのため、経営者自身も、特に悪いことをした覚えはないのに何か後ろめたさを感じてしまう。それが実態ではないでしょうか。

 しかし、実際にはそうではありません。経営者は、自分自身の富を増やすために従業員を酷使しているのではなく、率先垂範、自ら骨身を惜しまず汗水流して経営に尽力することで、従業員とその家族を守り抜いているのです。これは、資本主義社会で一般的に言われている経営者の定義とは対極にあります。

 今のようなせちがらい世の中、自分ひとりで生きていくだけでも厳しいことなのに、経営者は多くの従業員を雇用して懸命に経営に努めています。それは、素晴らしい「利他行」であり、社会の裾野にある人たちを助ける素晴らしい行為なのです。

 そして、会社を立派にしていくためには、会社に住む従業員が幸せで元気よく頑張って働いてくれなければなりません。会社が立派になれば、株式価値も上昇し、株主もハッピーになれるのです。ですから、従業員に喜んでもらえるように努めることこそが経営者の本分なのです。(要約)

 今日の一言には、「経営者とは、責任が重く、一瞬の気の休まりもなく、気の遠くなるような努力を継続してはじめて当たり前と評価されるような、考えれば考えるほど、割の合わない仕事かもしれない」とあります。

 つまり、万全な社内体制を整えていたとしても、外部要因によって赤字に陥るようなことがあれば、すぐに経営責任を問われるのが経営者なのです。

 しかし、経営者が身を挺して努力しているからこそ、多くの従業員が将来を託して働いてくれ、経営者を信頼し、尊敬してくれるはずです。そうしたものこそが、経営者が日々続けている苦労に対する代償なのです。

 よく、「経営者は孤独だ」と言われますが、「金銭には代えがたい従業員からの信頼や尊敬を得ることができるほど自分は頑張っているのか」と自問自答せざるを得ないほど、ハードワークを求められるのが経営者なのだ、ということではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?