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『稲盛和夫一日一言』 10月14日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月14日(土)は、「得意技を磨く」です。

ポイント:中小企業が新規事業、多角化に成功する秘訣は、まず得意技を持ち、徹底的にそれを磨くことから始まる。

 2015年発刊の『稲盛和夫経営講話選集 第3巻 成長発展の経営戦略』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、多角化について、「危険な道だからこそ、得意技を生かす」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 京セラの事業展開は、多角化に次ぐ多角化の連続でした。もちろん、多角化をしていけば危険性が増すことを承知の上でやりました。なぜなら、そうした危険な道を通らない限り、会社は安定もしなければ、成長もしないからです。

 危険な道だからこそ、自分の得意とするところの延長線上だけを私は狙いました。会社の幹部には、そのことを柔道に例えて「一本背負いが得意なら、自分はとことん、一本背負いでいく」と言いました。

 しかし、一本背負いが得意であるとすれば、対戦相手は必ずその技にはかかるまいと防御してきます。ですから、そう簡単にはかかってくれません。それでも、両膝が畳に着くくらい体勢を低くして果敢に技をしかけていく。
柔道の試合ではそうした場面をよく見ますが、私も「相手がいくら防御しても、とことん得意技でいけ」と言ってきました。

 もっと具体的に言うと、京セラはセラミック技術を有していますから、そこを逸脱しない、ということです。例えば、ラーメン屋をやってるなら、麺で勝負ということで、うどんぐらいはやってもいいかもしれませんが、丼(どんぶり)はいけない、という理屈です。レストラン業が強いのに、不動産が儲かりそうだと手を出す。すぐそうした儲け話に乗って、パッと手を出す、ダボハゼのような多角化は必ず失敗します。

 京セラの場合、クレサンベールという再結晶宝石は鉱物ということでセラミック技術の延長線上ですし、切削工具の事業には、セラミックスと金属の粉末を混ぜ合せて焼結して得られるサーメットという分野から殴り込みをかけました。それまでエレクトロニクス事業にしか展開できていなかった京セラが、自社が保有するセラミック技術の延長線上で展開することで、事業の柱を増やしていったわけです。

 多角化は、会社の安定と成長には不可欠です。ただし、それは非常に危険なことですから、自社が得意とし、精進してきた分野に集中すべきです。得意技を使って多角化していくことが必要なのです。(要約)

 文中に「ダボハゼのような多角化」という表現があります。
 「ダボハゼ」には、本来の魚のハゼ以外に、「どんなものにも見境なく飛びつく、無節操で強欲な愚か者」といった意味があります。どうも、魚のハゼがどんな餌にでも簡単に飛びつき、子どもでも簡単に釣ることができることからきたもののようです。

 多角化は、一見華々しく、素晴らしい事業展開のように思われがちですが、実はたいへん難しいものです。いくつかの柱が自立できなくなれば、倒産の危機に瀕してしまうことにもなりかねないからです。だからこそ、分をわきまえて展開することが大切になります。

 中小企業から中堅企業へ、さらに大企業へと成長していくためのステップについて、名誉会長は次のように述べられています。

 経営者であれば、誰にでも成長していく資格はあります。まずは自分の会社を収益があがる会社に仕立て、それをベースに多角化し、成功させる。
 そして会社がある程度の規模になり、自分の欲望のためだけではなく、「世のため人のために尽くそう」というふうに人生観が変わっていけば、会社を大企業にまで成長発展させることも可能でしょう。(要約)

 「心を高める、経営を伸ばす」
 会社を成長発展させていこうとするなら、同時に自らの人間性を高めていくことが不可欠だということです。


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