田原史起「中国農村の現在」(読書記録_15)※見つかった写真を追加。
こちらの本を読了。
「中国農村の現在」感想。
遅読なのですが、最近読んだ本の中では最もさくさくと読めました。
中国農村の実態に迫る内容で、著者の農村社会学の研究者・田原史起さんはなんと20年以上も現地でのフィールドワークを重ね、その成果を新書にまとめたそう。
インタビュー記事もありました。
中国の農村を歩き、農民と知り合い、仲良くなった人とざっくばらんに言葉を交わす。
それらの会話の断片や、時には寝食を共にしながらの観察を通じて、中国の農村の現在、農民の暮らしぶり、都市との関係性、政府が進める「新型都市化政策」の現在と行方などを考察されています。
あとがきにありましたが、田原さんの前著「草の根の中国:村落ガバナンスと資源循環」は学術書の作法に則って書いたものだったのに対し、本書は一般読者を対象とした新書で自由な形式で書かれたものということで、確かにとっつきやすかったです。
特に、調査に対する農民の協力度合い、スタンス、またそれが、習近平以後の直近十年間でどのように変化してしまったか、変容の様子、背景についての考察が興味深かったです。
ざっくり言うなら、昔、だいたい2000年代は自由度が高かったものの、2010年代以降は、調査はかなりやりづらくなったようです。
というか、外国人の農村調査は実質不可能な状況のよう。
中国の田舎についての、まとまりのない個人的な話。
私は中国にはしょっちゅう滞在しているものの、農村にはほとんど行ったことがありません。
一度、2001年の旧正月に、友達の奥さんが江蘇省の実家に帰るときに、ご一緒させてもらい一週間ほど滞在したことがありました。
もちろん、調査などではなく、本当にただの「滞在」でしたが。
旧正月、特に予定がない私を、その優しい友達とその奥さんが誘ってくれたのでした。
その町、(村?)は、自分の人生の中で、ある程度まとまった期間寝泊まりした場所としては最も田舎でしたが、そこは、本書が指す「農村」と同じレベルの田舎だったのか、いまいちわかりません。
中国の田舎の町、村は発展の度合いや大きさ、人口などにより、多層的なようです。
また、比較的沿海部に近い地方、内陸、南北などの違いにより、町、村の様相もさまざまだと思います。
この本を読み終わって思い出したのが、友人の奥さんの実家の町(村?)のことだったのですが、あそこは中国においてはどのぐらいのレベルで田舎なのだろう?という疑問が浮かびました。
でも、今思うのは、あそこは「村」というよりは、ひとつレベルが都市に近いという意味で「町」だった気がします。(本書では、「県城」という、日本人には馴染みがない用語で説明されています。)
今思い出したのですが、その町の中心には、若者たちが集まる広場があり、ある建物に入ると、ローラースケートリンクがありました。
照明がそれほど明るくない中で、キラキラと輝く笑顔の少年、少女がリンクを滑り、体をくねらせ、回っていました。
そういう場所は、「村」にはない気がします。
そういえば、「青空床屋」というか、道端で髪を切ってくれるおばさんがいて、私は髪を洗ってもらった気がします。
あとは、泊めてもらった家の屋上から、数十メートル離れた家の庭で、豚を殺してさばいている様子が見えました。
まとまらずすみませんが、「中国農村の現在」は、個人的な中国の思い出とも相まって、面白かった。
追記:20年以上前の写真が数枚見つかりました。
上述の、私が滞在した町の写真が数枚、見つかりました。
今こうして写真を見直すと、やはり村というよりは、町と言えると思います。
「中国農村の現在」で整理されている町の区分で言うなら、「県域社会」の中心部に当たる気がします。
「県域社会」という概念は日本人には分かりづらいものですが、(詳しくは興味のある方はぜひ本書を手に取って欲しいのですが)、著者の田原さんによると、”中国社会の細胞のような位置付け”として都市と農村がワンセットになったものとして「県」というものがあるが、その中ですでに都市化が進み、農業人口をほとんど持たず「区」になっている地域もあり、行政レベルの「県級」の数は、都市と農村をワンセットにした「県」とは一致しないそうです。
田原さんによると、都市と農村をワンセットにしたものを「県域社会」という概念で区別し、その数は中国全土で2089を数え、中国の国土面積の9割、人口面で7割ほどを占めるそうです。(つまり、10億人)。
・・だらだらと追記してすみません。
20年以上前、誘われるままに一週間ほど過ごした中国の片田舎が、広い中国社会の中でどのような場所だったのか、ごく個人的な興味が引き起こされ、つらつらと書いてしまいました。
友人(写真の、豚を見ている人)とも、長いこと連絡を取り合っていないのですが、久しぶりに連絡してみようかな、とも思いました。
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