第40話「名のない光が結ばれる」
数年後、第三志望の中高一貫校に入学することが決まった。父は約束通り久保誠一郎の絵を購入してくれた。
草原の上に崩れた教会が描かれている絵だ。合格祝いにはふさわしくないのではないかと両親は言ったが、僕には希望のある作品に思えた。教会から這い出て羽ばたこうとする天使が見えたからだ。
僕が一人暮らしを始めるまで、その絵は実家のリビングに飾られていた。サイズが大きく、マンションのリビングでは窮屈そうだった。壁の血痕を隠すのにちょうどいい風景画だと母が真顔で言った。受験も終わり