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マジックをはじめる時に使うべきセリフとは?

「今からこのトランプを使ってマジックをするんですが…」

こんなセリフを使ってマジックをはじめていませんか?

コンテストやバーでこんなセリフではじまるマジックを何度も見たことがあります。

だいたい続きは「どなたか一枚カードを引いて頂いてもよろしいですか?」あたりです。

もはや教科書に載ってるレベルでよく聞きます。

本当にそんな教科書があったなら作者を連れてきて2時間くらいどういうつもりなんだと問いただしたくなるほどです。(過激派)

それはさておき、そんなマジックを見るたびに(もったいないなぁ…)という気持ちになります。

もちろんマジックにおいてこのセリフが100%悪ではありません、実際ぼくの手順の一つにはこのセリフが組み込まれています。

問題なのはひとつのマジックで喋れる時間、セリフの量は限られているのに意味もなくこのセリフを使っている事です。

見ればわかる当たり前の事実をただ示すだけに使うにはマジック中に話せるセリフの量は少ない……ということです。

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ではどんなセリフを最初に言うべきなのでしょうか?


それは演じるマジックによって変わります。

と、言われても(そういう答えが欲しいんじゃない……ッ)となるのはわかります。

これで終わると時間返せ!と、どこかから聞こえてきそうなので、ある程度どのマジックでも使える汎用的な考え方、そこから出るセリフを紹介します。

まずマジックをはじめるにあたって、最初のセリフでどんな効果を期待したいのか?を考えてみましょう。

ほぼ全てのマジックに共通するのが

①今からやるマジックに興味を持ってもらいたい

これから何か面白い事が始まるんだ、というはじまった感、もっというなら空気が切り替わった感を出したい

という二つの目的です。

①について

今から始まるマジックに対して、お客さんに何それ見たい!と思ってもらえるようなセリフを言う事ができればその後のマジックがかなりやりやすくなります。

②について
前回の記事で拍手の起点となる動作は必要、その理由の一つに『終わった感をだして演技のメリハリをつけるため』といった内容のものを書いたのですが、それと同様にマジックにはまたはじまった感も大事なのです。

人間はずっと集中し続ける事などできない生き物です。
マジックを見るには集中してもらわないといけない、しかし集中するというのは思っている以上に疲れる事なのです。
だから、

はじまった感を出すことによってお客さんに『今からは集中力を使って見てくださいね!』と、 終わった感を出すことによって『もう集中しなくていいから休憩して集中力を回復してね』と、 暗に伝えるのです。

こうする事によってお客さんの集中力をコントロールし、よりスムーズに演技を進め、楽しんでもらい、かつ疲労を軽減する事ができるようになります。

不思議な事が起きれば驚く、それが集中してちゃんと見ている状態で起こればさらに効果は増す。
逆にぼーっとしながら見ていたら「えっ?、あ、ごめんちゃんと見てなかったもっかいやって?」なんて言われたりします。
(実際にコレを言われた経験はみなさんにもありますよね?……ぼくはあります。しかも最近言われました……でも偉そうに語ってます、ごめんなさい……。)

マジックは演技中に集中力をコントロールして、その濃淡を使い何かをするなんて技があるくらい集中力と密接な関わりを持つパフォーマンスです。
皆さんにも馴染みがある言葉を使うならミスディレクションやオフビートなどがわかりやすいのではないでしょうか?

マジックと集中力のコントロールは切っても切れないくらい根本的な部分で結び付いています。(そもそもエンターテイメントやパフォーマンスというものがある程度そういう性質を持っているというのが正しいのかもしれません。)

演技の前後での大きな集中力のコントロールができていないのに、演技中の細かな集中力のコントロールなどできようか?いや、できない(反語)

なっがながと書きましたが、集中力のコントロールに関してはいつかまた別でそれ単体の記事を書こうと思います、それくらいぼくの中では大事な事なんです。
たぶん書きます、いつか……maybe…

話を戻して、これでなぜ最初のセリフで①と②を目的にするのかはわかっていただけたと思います。

いよいよ本題のセリフの具体例と参りましょう。

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1.質問を投げかける

質問というのはコミュニケーションにおいて、とても強力な武器であり、これをする事によって観客は傍観者から参加者へと引き上げられるのです。

この記事の最初も質問ではじまってます、これもそういった意図があるからです。


みなさんも経験ありますよね?学生時代にぼーっと聞いていた授業でいきなり先生に「おい、〇〇〜この問題の答え言ってみろ〜」なんて言われた事。

この瞬間あなたは1/40のクラスメイトから返答者という1/1の存在に引きずり上げられ、否が応でも残りの39人の注目を一身に浴びる事になります。頭は急遽フル回転し自分の全集中力を使って答えを探しはじめたはずです。

コレをマジックでやるのです、質問はなんだっていいんですがその質問にまで目的と意図を設定できればあなたのマジックはより良くなるでしょう。

一応どのシチュエーションでも万能で使えるのを紹介すると「お名前を伺ってもいいですか?」です。

この質問によって、例えば最初の「今からトランプを使ってマジックをするんですが…カードを1枚引いていただいてもいいですか?」というやりとりが、「お名前を伺ってもいいですか?」「Aです」「Aさん!ではAさんにお願いがあります…1枚カードを引いていただきたいんですがどれにします?」というやりとりに変わります。

『とにかくマジックで使うために必要だから、誰でもいいけど観客に引いてもらうカード』だったものが『Aさんに引いてもらう事に意味のあるカード』へと変わるのです。
(実際に意味があるかは重要じゃないんです。その人が引く事に意味があったかどうか考える段階まで進んだ時には、思考はマジックの現象で埋め尽くされてるんですから。)

ランダムに選ばれた1/52のカードなのかAが選び取った1/1のカードなのかという印象の差は、Aさんの主役感、ひいては観客の集中力のコントロールへと繋がります。

他にもありがちなパターンとして「お名前は?」「ウィルスミスです」なんてボケてもらえたりしたら、ちょっと困惑しながらも半笑いで「ではウィルスミスさん!よろしくお願いします!」と大きな声で言うだけで周りのお客さんに笑ってもらえたりします。
「司会者とかビンタしそうな顔してますもんね」なんて返しても面白いかもしれませんね。

こういったところで楽しんでもらえたら動画とは違うライブ感というのを感じてもらえますし、上手く返せたりするとお客さんからはプロフェッショナルという評価を貰えたりします。

2.使う道具を紹介する

これから始まるマジックに興味を持ってもらうのも、これから始まるマジックで使う道具に興味を持ってもらうのも、どちらも同じ事だと思いませんか?
厳密には違うんですがマジック道具に興味を持ってもらった場合でも「これで何が起こるんだろう?」となるならば①の目的は達成されるわけです。

ここでふと疑問に思ったんじゃないでしょうか、(え?それなら「今からトランプを使ってマジックをします」は道具の紹介にもなるから良いんじゃないの?)と……

もしそう思った人がいるならぼくは言いたい
お前はここまで何を読んできたんだ?ガンジス川で泳いでこい、空っぽの頭に泥水が入って少しは重たくなるだろうよ、と。

存在しない架空の人に暴言を吐いたところでこの道具の紹介のポイントに移ろうと思う。

当たり前のものは変わったもののように、変わったものは当たり前のもののように紹介しよう。

今回の目的は道具に興味を持ってもらう事とはじまった感を出す事、しかし、トランプは普通の日常品です、そして何よりマジシャンがトランプを使ってマジックをすると言うのは現代においては当たり前と言う認識になっています。

ということは、マジシャンがトランプ持って「トランプ使います」と言っても何も違和感も引っかかりも無く興味を引く事ができないわけです。

しかしここで想像して見てください、「今から変わったもの使うんですけど……これ知ってるかなぁ?……見たことないかもしれないんですけど……これ…ト ラ ン プ っていうんですよ」といいながらすごい渋い顔してトランプを出す所を。

観客は一体何が出てくるんだと身構え想像し、そして肩透かしのようにトランプを出される、声に出すかはわかりませんが(知っとるわ!)とツッコミを入れるかもしれません。

少なくとも何か変なものを出そうとしている、何かが始まるんだという感覚と出てくるものに対しての興味を引くことはできます。

逆に変わったものというのはそれだけで興味を惹きます。

そこに存在する事に違和感のあるもの、そもそもこれなんだ?ってものはただそれだけで人の興味を強く惹きつけます。

であるならばそこに対するアクセントはまるで当然のものかのように紹介する事です。それによって違和感を引き立てられます。

例えばそれはサムカフだったりします。

「今からみなさんよく目にするアレを使ってマジックします、これはもうみなさんご存知だと思います、ひょっとしたら今持ってる人もいるかもなんですけど…」

といいながらサムカフを出して見てください。
全員「なにこれ???」て顔をして頭の上に?を浮かべた後、周りの人が知ってるか見回すはずです。

そして「なんですかこれは?」とか「え、B君知ってる?」なんて会話が始まればそれに応える形で「え!ご存知ないですか!?SMグッズなんですけど…」と答えてみてください、みんな目の前のSMグッズに興味津々になります。

ここまで来れば後はもうその道具の説明という形でマジックをはじめていけばいいわけです。

空気感が許されて余裕があるなら「SMグッズ好きですか?」なんて会話を広げても良いかもしれませんね。

余談ですがぼくはいつも「これを美人のお姉さんにされるのが大好きなんです……なのでお姉さん!!お願いしても良いですか!?」で、サムカフをはじめてます。

そのあと締めてもらう時には「あぁぁあ♡♡気持ちいいぃ♡♡もっと!もっとぉ!!まだいける!まだいける!!」と叫んでます。

お客さんが「もう無理!」というまでやります。

普通に「まだもう一段階キツくしめれます?」とかやるより限界まで閉じた感が出るし笑ってもらえるし楽しいです。(ぼくが)

3.今からやるマジックの紹介をする

当たり前ですが、殆どのお客さんはマジックのことを知りません。というより人間は知ってる事以外知りません。

これがどういう事かというと知らないもの、情報がないものに対して興味を持つというのは難しいという事です。

でも人が何に興味を持つかはみなさんも日常でよく目にしていますよね、そう肩書きや権威です。

いきなり知らない人にぼくを紹介すると考えてみてください、例えば「ろいくんです」と言って知らない人の前にぼくを差し出したなら「誰?」となるはずです。

これが「マジシャンのろいくんです」ならどうでしょう?「え?マジシャン?マジックできるの?」になるかもしれません。

さらに権威を付け足してみましょう「マジックの世界大会日本代表のろいくんです」になったら「え?マジックの世界大会!?凄い人やん!」になるわけです。

「ろいくんです」とただ紹介するより遥かに興味を持ってもらえるはずです。

これと同じ事をマジックでします、あなたのマジックに肩書きと権威を付ければいいのです。

「今からトランプを使ってマジックをします。」を例にとるなら「今からテレビで見るようなマジックをします」と言ってマジックをしてみてください。

お客さんの中にはテレビのマジック=凄いマジックという価値基準のある人が一定数存在します。

そういう人にとってはとても強力な権威付となります。

他にも「今からやるマジックは世界で一番難しいマジックです」とか「ぼくが初めて覚えたマジックです」とかなんでも良いわけです。

あなたなりにあなたのマジックが素敵になる肩書きをつけてあげてください。

ちなみにぼくは「5年前に全国大会優勝したんですけど、その時にやってたのがコインマジックなんですね、そうなんですよ、実はぼくコインマジックが得意なんです、今からそんなぼくがコインマジックをやります」と言ってトリコロールフライをやる事があります。

小さなこだわりですが、「全国大会でやったマジックをやります」とは言わない事です、あくまでそんな印象を持ってもらえるよう騙しはするけど嘘はつかない。

騙しはしても可能な限り嘘はつかない、これはぼくの自分に課しているルールですが、そのおかげで真実味が増す部分もあります。

真似る必要はないですが参考までに。

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今回の記事はいつもに比べると具体例が多かった内容だったと思います。

しかし重要なのはその考え方とそこから自分のキャラクターや演技に合わせたベストなセリフを考える事です。

サムカフをするのに「きもちぃぃい♡」と叫びながらやるのがあなたにとって100点かは分からないので、取り入れる、真似をする事自体はやっても良いのですが、自分に合うかはしっかり考えてください。

ヘルダーの偉人の言葉引用
意味のわからない質問をする(釘ってすきですか?)
ちゃんとしたマジックと適当なマジックどっちがみたいですか?
今からやるのはマジックとは少し違うんですけど…
マジックの中でとっかかりとなるセリフ(カップアンドボールの最初やループ系)
何か見たいマジックありますか?の意味のなさ

↑まだまだ書きたかったけど長くなりすぎるので削った部分のメモです、いつか補足的に書くかもしれません。書かないかもしれません…。

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