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貨物船の燃料は黒くてどろどろ 造船のおもしろ豆知識集#13

導入編はこちら↓

今回のテーマは「燃料」です。
船の燃料は船の種類によって様々です。

貨物船の多くはディーゼルエンジンが動力で、燃料はC重油という重油を使用しています。貨物船以外では、例えば巡視船ではディーゼルオイルなどC重油以外が使用されるものもあります。ここでは貨物船についての話をします。

ガソリンや軽油などは分類でいうと「蒸留油」といい、C重油のような重油は「残渣油」といます。残渣油は、蒸留した後の残りとなります。
C重油の性状は、黒くてどろどろ(=粘度が高い)、水分や不純物も多めです。特にこの粘度が高いという性状は、エンジンの燃焼室内に噴射する必要があることから、そのままは使用できない燃料で、およそ120度程度に加熱してさらさらの状態にする必要があります。
不純物や水分が多いのもそのまま使用できないため、主に水分を油清浄機で遠心分離させたり、フィルターを通して不純物を除去したりします。
エンジン内で燃料を噴射する前で、タンクから引いてきてポンプで移送するだけでも、ある程度さらさらである必要があるので、ためてある燃料タンクも常時35度程度まで加熱しています。燃料の加熱に使用するのは蒸気で、船の運航中はエンジンの排ガスの熱を利用しています。熱を無駄にしない、エコな設計となっています。

さて、いままで見たように、船には燃料を処理するために様々な機器が搭載されています。加熱器や油清浄機(遠心分離する)があって、蒸気を発生させる大きなボイラも装備しています。こんなに多くの設備を搭載してまでC重油を使用している輸送機器(=乗り物)は他にはないと思います。本来、移動する輸送機器には、普通余計なものを搭載せず軽いほうがいいからです。船一隻ごとにこの分の設備投資をしていることになすます。
なぜ貨物船には船上に多数の設備をおいて燃料を処理するのでしょう?その答えはあえてはっきり教えてもらったわけではありませんが、次のようになると考えます。
重量に関して貨物船の場合は、貨物の重量が圧倒的に重く、機関室の機器重量増加についてはそれほどシビアではありません。また、価格面についてもC重油などの残渣油は蒸留油より安価なことから、処理、加熱する装備を載せてもペイするということだと考えられます。

以上、理由については多少推測が含まれてしまいましたが、貨物船の使用燃料やその処理についての説明でした。

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