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社会人アートの世界「ホワイトボード」

2011年11月3日発行 ロウドウジンVol.3 所収

企業の経済活動において、日々生み出されつつ消えてゆく、匿名のアート作品――「社会人アート」
作家性からは程遠いところにある作品群から、一見芸術とは無縁に見える社会人たちが残した芸術の痕跡を鑑賞してみよう。


ホワイトボードとはいわゆる白板であるが、ここでは部署内において各社員のその日の行動や現在地、帰社予定時刻等を共有する用途で用いられる。たいていはあまり有効活用されていない。

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作品解説

 前回紹介した請求書とは異なり、ホワイトボードは日々更新されていくうえに、複数社員による共同の制作物ということもあり、先進的なインタラクティブアートに近い作品となっている。ホワイトボードの設置されたオフィスの一員になれば、無難にやり過ごしたい欲求と自己顕示欲との狭間で生み出された珠玉の書き込みを、日々リアルタイムに味わうことができる。大きな会社であれば、各部署のホワイトボード観賞業務で一日を潰すことも容易だろう。

 ところが近年では、ホワイトボードをネット上のグループウェアで代用しようとする動きが見られる。オフィスに鎮座することにより、必要のない者もつい眺めてしまう訴求力の高いアートだったものが、予定確認のためだけのツールに変化する。それにより、他人から興味をもたれない社員がいくら活発にグループウェアを更新しようが、そのパケットはネットの藻屑となってしまうのだ。ホワイトボードは無邪気な芸術活動が許されていた平和な時代のアイテムなのである。

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