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歌姫と孤独な男の物語〜『青い煮凝り』

◆エドワード・ゴーリー著『青い煮凝り』(柴田元幸訳)
出版社:河出書房新社
発売時期:2024年4月

不思議な味わいのある絵本です。歌姫カヴィッリアとその狂信的なファンである孤独な男ジャスパーの悲劇的な運命を、簡潔な文章と「細密な線画」で表現しています。

作者エドワード・ゴーリーはアメリカの絵本作家。1925年シカゴ生まれで2000年に他界しました。独特の韻を踏んだ文章とモノクローム線画でユニークな作品を数多く遺しました。サミュエル・ベケットの作品の挿画のほか劇場の舞台美術なども手がけたとあります。

カバー装画では、女性が青い煮凝りをもっていて、それが本書のタイトルになっているのですが、作中には煮凝りは全く出てきません。また煮凝りのなかに男の首が入っているのはサロメを想起させるけれど、それもまた物語と直接の関連性はありません。

訳者によれば、本作に関して作者自身は「わたしにしか分からない冗談がぎっしり詰まっている」と述べているそうです。登場人物の名にもそのような冗談のいくつかがこめられているようですが、まぁ、それは作者自身にしかわからないと言っているのですから、意味を詮索するのも無駄なことなのでしょう。

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