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皇室によるたおやかな「世直し」!?〜『スノードロップ』

◆島田雅彦著『スノードロップ』
出版社:新潮社
発売時期:2020年4月

恐縮ながら、約1年ぶりの投稿です^^; 
またボチボチと発信していきたいと思いますのでよろしく。この間、過去の投稿に「スキ」をつけてくれたりフォローしてくれる人が少なからずいてありがたいことでした。あらためて感謝申し上げますm(_ _)m

コロナ禍における外出自粛期間は、読書のススメがあちこちから聞こえてきて、フェースブックなどでも「7日間ブックカバーチャレンジ」の投稿が花盛りでしたね。まぁ、私にとっては、どういう御時世であれ、家にいて用事のない時は本を読むというのが昔からの基本的な過ごし方ですが。

さて、再開第一発目にご紹介するのは島田雅彦の最新作です。

神話の時代から続く世界最古のファミリーの皇后が「令和の改新」を敢行する。それは虚言にまみれ自立心を放棄してしまった国の為政者たちを糾弾する企て。皇后に背中を押された天皇もついに決断し、みずから「詔勅」をしたためるにいたる、というお話です。

……誰かが「嘘をつくな、真実を語れ」と号令をかけなければ、この国は滅びる。その号令を私がかけることには正直、ためらいがあったが、もう黙認することには耐えられなくなった。……(p172〜173)

監視と規則でがんじがらめの憂鬱な日々を過ごしていた皇后。政治を見れば、愚かな為政者たちが売国的な振る舞いを平然と実行している……。
皇后は、ジャスミンという名の侍女を雇います。外国語とITスキルに秀でた女性。クローゼットの一角に「ダークネット」に接続するツールをしつらえます。皇后のハンドルネームはスノードロップ。本音を書き込むと、長く悪政に耐えてきたらしい民衆の怨嗟と憤懣に満ちた反応がかえってきました。

作中では、米国への隷従を日露戦争の借款にまで遡り、現行の日米安保体制が根本的に批判されます。そのうえでロシアや中国との親密な外交を模索し始めます。
ジョーカー大統領にラスプーチン大統領、李錦記主席。百戦錬磨の為政者たちがスノードロップと話す機会をもちます。皇室外交の場で、官僚や政治家たちの目をかわしながら各国首脳と言葉を交わす場面などなかなかスリリング。そんななかで日本の総理大臣には固有名詞が与えられていないのが象徴的です。はたして皇室によるたおやかな「世直し」は成功するのか……?

一昔前なら物議を醸したかもしれない題材ですが、島田は軽快なノリで現代の政治を風刺してみせます。天皇主義者ならばむしろ快哉を叫ぶようなお話といえましょうか。逆にいえばデモクラシーを追求する一般国民にとっては無邪気に楽しんでばかりもいられない設定です。皇室に決起してもらわねばならぬほどこの国の民主政は情けない状態に堕してしまったのか。そんな声もまた行間から聞こえてくるようです。

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コラムニスト、ライター。大阪府岸和田市在住。時事問題全般、メディア論、書籍、映画・アートetc. 著書:『一目でわかる学校系列と教育業地図』『一目でわかる商品・ブランド地図』(日本実業出版社)、『東西学』(経営書院)、『大阪的基準』(東洋経済新報社)など。