わが筆禍史

一度も訴えられたことのない物書きなど信用しない〜『わが筆禍史』

◆佐高信著『わが筆禍史』
出版社:河出書房新社
発売時期:2017年8月

辛口批評で知られる佐高信は、あちこちでトラブルを起こしてきたらしい。訴訟騒ぎも一つや二つではなく「一度も訴えられたことのない物書きなど、私は信用していない」とまでいいます。本書はそんな人騒がせな物書きがこれまで体験してきた「筆禍」の数々について書き記したものです。

佐高の喧嘩相手となった人物は左右両翼にまたがっていて多士済済。日向方齋、渡辺恒雄、木村剛、渡辺淳一、中坊公平、猪瀬直樹……。自民党はいうに及ばず共産党ともあるイベントをめぐって一悶着あったことがしたためられています。

生々しい事象ばかりを扱っているので、佐高の言い分を鵜呑みにするわけにはいかないでしょう。共産党批判などいささか粗雑でステレオタイプという気がするし、下品な表現も少なくありません。「真実は下品に宿る」との箴言も出てきますが、異論もありそうです。が、本書全体をとおしてメディア側の萎縮や自制なども浮かびあがってきて、それなりに社会的価値を有する本になっていることも確か。

故小渕恵三が首相をつとめていた時の挿話が印象的です。佐高は小渕に対して「オブツ」呼ばわりした文章を週刊誌に発表。その後、さるパーティで小渕首相に遭遇します。彼は「批判する人も必要だから」と言って握手を求めてきたのだとか。さて、現首相にそれだけの器量があるのでしょうか?

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