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【ショート ショート】 なんか妖怪

あれっ?変だな、何か違和感があるなっていう
グループを見かけても、ジッと凝視したり、
話かけたりしないで下さいね。
だってその人たちが、本当に人間かどうかなんてわからないのですから。

なぜ私がこんなことをいうのかというと、
かくいう私も、人間ではないのでして。
猫むすめ・・・いえ、間違えました。
年増の化け猫なので。

怪異は、夜だけとは限りませんよ。

マイナスの想念から生まれた者もいるけれど、
妖怪のほとんど大半が、もともとは人間だったりするのだ。
純粋が故に騙されたり、歪んだ嫉妬に囚われて抜け出せないまま、不本意ながら妖怪になった者もいる訳で、
理由はそれぞれだけど、要するにみんな人間に未練たらたらなのだ。

方々に散らばっている妖怪が集まっては、定期的に情報交換をしている。
集まる妖怪は、その時々によるので決まってはいない。
正体がバレずに上手く人間と共存できているか、
不具合はないか、また、烏天狗が持ってくる情報などを確認したりしているのだ。
それが、まさに今日。
毎回、なぜか私が仕切り係なのよね。

「だからさぁ、せめて帽子にしなさいよ。何で青白い顔したオヤジが日傘さしてんの?」

日本で暮らしているヴァンパイアのオヤジは、
陽の光が苦手だ。
あと十字架にニンニクでしょ、それはわかるよ。
だけど、オヤジが日傘って目立つからね。
それでなくても私たち、怪しい集団なのだから。

一応はみんな、出来るだけ人間に寄せてはいるけれど
ヤバさは一目瞭然よ。
しかもコンビニの駐車場で。
えっ?真夜中の墓場じゃないの?と思うでしょ。
今は、コンビニが人気なんですよ。
色々と便利だからですって。

「だってせっかく髪をセットしたのに、帽子だとくずれちゃうだろ?200年とチョイ生きてるけど、これだけは譲れないんだよ」

オヤジは、日傘に手鏡で髪を気にしている。
女子か! 髪、オールバックじゃん!
昔は鏡も苦手だったらしいけど、平気になったのは、
どうやら魔女に頼み込んで、魔法をかけてもらった
らしい。
ナルシストのヴァンパイアはキモい。
ちょっと、笑わんでええから、キバをしまえ!

「あれっ、雪姉さんは?」

最年長の雪姉さんは、ガリガリに痩せた雪女で
とにかく暑さに弱い。
そろそろ秋の気配を感じる季節だけれど、まだ
残暑が厳しいから、辛そうだ。

「コンビニの中にいますよ、座敷わらしをつれて」

毛むくじゃらで無ければ、普通にイケメンの狼男が、
店内を指差しながらいった。
この男が仲間内では、一番人間らしい。
ただ満月の時は、変態ちっくに息が荒くなり、
凶暴になるから要注意だ。

姉さんは店内で、座敷わらしとアイスを食べながら談笑している。普通に親子に見える。
何かほのぼのしてて、良い感じだ。

河童は「暑い、暑い」といいながら、頭から水をかぶっているし、がしゃ髑髏は、見た目はただの背の高い人だけれど、歩くとどうしてもガチガチ音が鳴るのだ。
案外気にしているのか、つま先立ちでヨロヨロ
歩くから、さらにデカくなって違和感が半端ない。

座敷わらしのペットの木霊が、籠の中で誰かの真似をしてはケラケラ笑う。
オヤジは周りをキョロキョロし確認して、その一つを
こっそりポケットに入れたのだが、私はそれを見逃さなかった。

「こらっ! ちょっと、返しなさいよ」
「コラ チョット カエシナサイヨ」

木霊が私の真似をして笑う。
オヤジも
「バレちゃったか〜 可愛いからつい」
などといいながら笑う。
あんたは笑わんでいいから、木霊を返せ!

少し遅れてカラスに扮した烏天狗が、集団でやってきた。
情報屋だから、もちろん黙っちゃいない。
重要な情報もあるけれど、あれこれどーでもいい話もし続けるので、とにかくうるさい。
その声を聞きつけたのか、近くにいた餓鬼たちが集まってきた。・・・マジか。
そして、河童が持っていたきゅうりに群がっていく。
ねえ、きゅうりを何で持ってきたの?

店としたら、いい迷惑だ。
駐車場の隅を陣取った怪しい集団に、誰もがそそくさと通り過ぎていく。
それでいいのです。
どうか無視して下さい。
私たちは、怪しい集団ですから。

店員はたぶん怖くて出てこられないのだろう。
注意をされたことは、まだない。
ああ、本当にすみません。
私にも収集がつきません。

みんなやりたい放題やった挙句、最後はオヤジが外国人であることを全面に出して、ハロウィンの楽しさを切々と語り
「みんな本来の姿でハロウィンに行こうじゃないか!」という話で盛り上がって、その日の集会は終わった。
・・・ああ、疲れた。



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