インスタメディア『古着女子』の成長から感じるブランド観への変化。
こんにちは。
前週の記事にも書きましたが、『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』を読んだ訳ですが・・・
その中でも
「ブランドが提供するのは、体験であり、プロダクトであり、メディアだ。」「ブランドがメディア化するとき、必然的にプロダクトはコンテンツ化していく」という言及が個人的には印象的でした。
まさにその通りで、ブランドは一概に商品というモノを提供するのではなく、"世界観的なもの"であったり、"世界観を形成する情報(コンテンツ)"の提供になってきているなあと。
・・・という事で、今週はプロダクトをコンテンツの一つに持ちながらも、メインは『古着を軸にユーザー参加型のメディア・コミュニティの形成』を行う古着女子さんについて書こうと思います。
古着女子とは
1.SNSメディア
2.オリジナル商品及びユーズドアイテムの販売
3.書籍出版
4.コミュニティスペースやイベントの運営
が主なサービス。
“古着”を軸に独自の世界観を形成、追究。
下北沢周辺に居そうな古着が好きな女子/男子に向けてサービスを提供する。
【SNS情報】
Instagramでは5つのアカウントを所有。
※情報は20/3/22現在のもの
①古着女子(@furuzyo)
フォロワー:33.2万人
古着の着こなし方法の情報発信がメイン。
②nemne(@nemne_store)
フォロワー:4.9万人
オリジナルブランド【nemne】の公式アカウント。
韓国風テイストのガーリーなアパレルアイテムを取り扱う。
③spoon(spoon__store)
フォロワー:7.4万人
オリジナルブランド【spoon】の公式アカウント。
古着テイストを軸にしたボーイッシュなテイストのアイテムを取り扱う。
④9090(@9090s_)
フォロワー:10.8万人
買い付け古着を展開する、古着屋【9090】の公式アカウント。
⑤古着男子(@furudann)
フォロワー:12.2万人
古着の着こなし方法の情報発信がメイン。古着女子のメンズ版。
テーマカラーや装飾などの微細な差こそあれ、それぞれのアカウントの構成は基本的には同じ。
基本的には同じテイスト軸のユーザーに向けて発信していると思うので構成を変える必要はないのかも。
【イベント企画について】
インフルエンサーによるフリマ企画などを開催。
チケット700枚が3時間で完売したそう。。すごい。
また、下北沢にインフルエンサーやクリエイターと直接触れ合えるコミュニティスペース【pool】を展開。
4C分析で紐解く
今回は、ユーザー視点で【何がサービスを利用するメリットなのか?】を分析していきます。
項目は
①顧客価値
②顧客コスト
③企業⇔顧客のコミュニケーション
④顧客の利便性
の4つ。
①顧客価値
最も重要な点は「同じ世界観を好む人々がコミュニケーションできる場を提供してくれる」ということ。
古着/古着テイストを軸に情報発信しているメディアやコミュニティは少なく、求めていた層は一定数いたのでは。
顔切りの写真を使用することでよりリアリティがあり、参考になりやすいのもポイント。
②顧客コスト
メディア面はSNSでの展開なので基本的には無料。無料で、今まで雑誌で得ていた様な質の高いトレンド&着こなしの情報が手に入るのはユーザーにとって非常にメリットになっていると思います。
展開しているオリジナルアパレルに関しては~5,000円程度。
メインユーザーと思われる、10代~20代の学生層にも手を出しやすい価格帯。
アルバイトやお小遣い次第ではトータルコーディネートで買いそろえることも十分可能。
③企業⇔顧客のコミュニケーション
Instagram上が中心のため、ユーザーが企業に対し気軽に意見を表示しやすい。
指定ハッシュタグでのユーザーの投稿やアンケート機能、DMを駆使し、意見を拾い上げることで企業とユーザーが共同でメディアを作成。
→メディアに関しては投稿されたコーディネートをランキング形式で毎週発表※後述してコンテンツ化させる、
オリジナルアイテムに関してはアンケート機能で製品化を決定するなども。
④顧客の利便性
SNSによる情報発信がメインなので、通勤通学の隙間時間で効率よく情報の収集が可能。
保存機能やスクリーンショット、リポストを使えば情報のストックや自身のフォロワーへの拡散も容易。
SNSの取り入れ方
【アカウントトップから見た図】
Instagram運用の中でもマスト条件の『連続する9枚が調和をとれているかどうか』。
古着女子のアカウントは投稿の表紙はすべて文字入りにすることで、世界観をキープしている様に思います。
また、あえて被写体の顔を写さないことで、モデルではなくあくまでコーディネートに焦点を当てています。
自分と重ねやすく、コンテンツ内容が入って来やすいのもポイント。
インフルエンサーを起用し、その容姿の良さがPV数を運んでくることも確かにありますが、そうすると、本来ターゲットにしていないユーザーもまた着いてくることになってしまう。
純粋にコンテンツの内容に注目をさせ、絞り込んだターゲット層に深くアプローチする方がエンゲージは高く、媒体としての質の担保に繋がっているのではないでしょうか。
【投稿内容】
投稿はリポストが中心。
1ポストの中に、複数のコーディネート画像と、置画が掲載されています。
リポストした画像には投稿元のアカウントへのタグ付けも。
気になるのは、キャプション(コメント部分)が長いということ。
Instagram上のメディアは割とキャプションが短くあっさりしており、投稿画像に全振りしているところが多いのですが、古着女子ではきちんとコーディネートやアイテムのポイントが書き込まれています。
複数枚投稿やキャプション部分への詳細な書き込みにより、1ポストに情報をしっかり詰め込むことで保存されやすい投稿になっているのでは。
●保存機能について
こちらのメディアのインタビューにもありますが、保存機能はユーザーにとって「自分のための空間」であるということ。
いいねをしたかどうかはフォロワー等他人に見られてしまいますが、保存機能は他人に通知が行きません。
なので、保存をされたかどうかということは、そのポストがユーザーにとって本当に気に入られたものだったのかどうかの指標に成り得ます。
投稿毎の保存数を見て、次のコンテンツ企画をするのも有効なのでは。
【ストーリーズの利用】
ストーリーズ利用の面でのポイントは2つ。①ユーザーとのコミュニケーションの場としている ②古着女子のアカウントに掲載されると「ちょっと嬉しい」気分を演出する ということ。
①に関しては、正直ポストではフォロワー数といいね数の割にコメントが少ないなと感じていたのですが、どうやらDMやストーリーズでの「質問はありますか?」の方に多くが届いている様子。
企業側もストーリーズとハイライトを駆使して一つ一つきちんと回答していました。
・・・先程の保存数の話でもそうですが、やはり10~20代の若年層にとっては、自分がしたコメントが他のユーザーに見られない、DMやアンケート機能への回答の方が使いやすいのでしょうか。
②については、古着女子では毎週ランキング形式でピックアップした投稿を発表。
ユーザーにとっては、これに選出されることでそこからフォロワー数やいいね数も増えるし、それをきっかけにコミュニティ内でも仲間が出来たりと、ちょっと嬉しい経験ができるのではないでしょうか。
それによって、「また投稿しよう」と投稿の連鎖が起きてUGCの担保が可能になるのでは。
ここがすごい!&まとめ
長くなってしまいました。
この古着女子のすごいポイントは以前noteに書いたGlossierと結構近くて、
ファンの囲い込みと「古着女子は私たちのメディアであり、ブランド」感を演出するのが上手だということ。
オリジナルアイテムを扱っているEC事業の方でも、積極的なアンケート機能の利用や、企業側が指定しているハッシュタグ#フルジョ をたどり、撮影方法やコメント、コーディネートを見て次回の商品企画に活かしているのだそう。
『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』の内容にもありましたが、今後よりSNSやデジタルが発達していくにつれ、ユーザーの購買行動が従来のような受動的なものはなくて、むしろ能動的にブランドの方向性を左右する様になるのではないかと思います。
今週は以上です。ありがとうございました。
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