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桜の花片を拾うが如く

なぜ日本人に生まれたのだろう。
なぜ人生の大半を日本で生きてきたのか。
なぜ今もここに留まっているのだろう。

ある時一つの答えが出て、それから長い時がたった。

日本語。

日本語を使って書かねばならないことがある。
自分の言葉をこの世界に放り投げなければならない。

自分の心の眼がとらえた、小さな貴きものを。

舞い散る雪のようにあとからあとから降ってくる桜の花片。風にのって驚くほどの距離を飛び、どんな小さなところにも入り込む。
一つの花が咲き、散るまでにどれほどの力が必要か。一つの花、一枚の花片にも物語があるだろう。また、見る人それぞれが心の中で花の物語を創る。しかしそのほとんどは語られないまま消える。

指先ほどの小さな極薄いの花びらを一枚、一枚と拾い、アルバムにとじこめるように。
低く深く静かに流れるバッハの音楽のように。白い鳩を勢いよく空に放すように。
語る。

今日がその一日目であるように。

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