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幽霊

悲しいことが起きたわけでもないのに、突然、悲しくなる時がある。

実はそれは、幽霊のしわざだ。

ぐっとこらえた悲しみたちが、心の底にしんしんと降り積もって、分厚い悲しみの層を作る。

それらはなかなか溶けることはない。

その代わり、ときおり層の一部が幽霊になって、心の中でいたずらをする。

「訳もなく悲しみに襲われる」という現象は、幽霊のいたずらによって、誘発されるものなのだ。

なぜ彼らは、いたずらなんてするのか?

それは、構ってほしいからだ。

彼らの正体は、元々悲しみだった。せっかく悲しみとして生まれてきたのにも関わらず、ぐっと外に出すのをこらえたせいで、その役割を果たせずに、心の底に沈んでしまった。

だから、せめて気づいてもらいたくて、心の底からちょっかいを出す。

親に気づいて欲しくて、わめき立てる子どものように。

彼らを成仏させるには、彼らの存在を認めてあげることだ。

彼らの存在に気づき、認め、受け入れてあげると、幽霊は流れる涙となって成仏していく。

その時の気持ちよさは、幽霊が「気づいてくれたお礼に」と、残していくものだと言われている。

訳もなく悲しくなってきたら、幽霊のためにも泣いてあげよう。きっと後から気持ちよくなれるはずだ。

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