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自信家

 彼女はきっと、将来有望な小説家だ。ただし、いまだ売れていない。
 彼女は日ごろからマイナーな小説ばかりを読んでいた。担当の編集者は、そのことが彼女の書く小説を、面白くないものにしているのだと思っていた。
 あるとき編集者は、「もっと面白い名著を読まなきゃダメだぞ」と、彼女にアドバイスをした。「そうね」と彼女はすんなり聞き入れ、読んでいた本を閉じた。
 次に編集者が彼女の元を訪れたとき、「今どんな本を読んでいるんだ?」と問うた。すると彼女は無言で読書中の本を見せつけてきた。いつもと違う本。それを見せつけてきた彼女の表情は、いかにも名著を見せつけているかのような表情であった。
 編集者は、自分の目に飛び込んできた作者の名前を見て、改心した。
「なるほど。私の思い違いだった。売れない原因は、自信過剰であることだったのか」

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