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【短編小説】nero【完結】

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憧れは蛾の翅で飛び去った
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#連載小説

nero 2

風の吹いていないタイミングで、小汚い人家の二階の窓が、ガタガタ震えた。不気味、窓ガラス…

ピルスト
5年前
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nero 3

雲の裏で人の目にさらされていないときでも、太陽はちゃんと動いている。ネロがもたもたしてい…

ピルスト
5年前
4

nero 4

やがて険しい山道に入った。それにともない、しつこくまとわりつく雪の床は、だんだんと薄くな…

ピルスト
5年前
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nero5

無慈悲な鉄条網に行く手を塞がれた、とネロは思った。疲労感が早とちりさせたんだね。近づい…

ピルスト
5年前
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そろそろ食事が終わりそうだったのだが、唐突に野球帽をかぶった男が大声で演説を始めた。小柄…

ピルスト
5年前
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3  ネロはいそいそと起き上がり、いつもサルが眠っているはずの布団に何気なく目を向けた。…

ピルスト
5年前

nero8

部屋に戻ると、毛布が足元に丸まって忘れ去られ、布団の中が晒されていた。マリは目を覚ましていて、枕の上に頬杖をついて、昨日サルが読んでいた雑誌を広げていた。 「朝ご飯はいつも食べないの。食欲ないから」と、マリはネロの質問を先回りして答えた。「自分の欲求は、ちゃんと自分で管理してるのよ」 「でも、それで飛行訓練に耐えられる?お腹すいちゃうよ」服の捲れたところから見える、細い腰に視線を向けながらネロが訊いた。マリは驚いたようにネロを見上げると「訓練?先生もいないのに、どうやって

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ネロとマリは施設の敷地の外に出るため、いったん部屋に戻って上着を持ち出した。マリはネロ…

ピルスト
5年前
5

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 街は、ネロが前に通り抜けた駅のある街とは違って、人の気配があった。人々は、あらゆる場…

ピルスト
5年前
5

nero11

 太陽は目を離すとどこかへ行ってしまう。ネロとマリは太陽の監視を怠っていたため、昼食をと…

ピルスト
5年前
3

nero12

 灯りなしで立ち入るには暗すぎる部屋の奥に、人の気配があった。ネロが灯りをつけようとする…

ピルスト
5年前
6

nero13

告白 「まずお礼を言わせて、ありがとう。私に告白の機会を与えてくれて」  暗闇に潜んでいる…

ピルスト
5年前
6

nero14

 ネロは繰り返し躓きながら、自分の部屋に戻ろうとしたが、道が分からなかった。さいわい土田…

ピルスト
4年前
5

nero15

ネロは腰をかがめて視線を合わせ「大丈夫?どこか悪いの?」と、訊いた。「顔が真っ青だよ」  彼はネロの声に反応して顔をあげ、こう答えた「あんたよりはましだよ。鏡を見な」  ネロは自分の顔を手のひらでさすった。鏡はもちろん、鏡の代わりになるものも見当たらなかった。 「それより変な本だね。どこで手に入れたの?」 「誰かのノートみたいなんだ、あそこに落ちてた」ネロは石の引きずられた跡を指さした。 「くだらない遊びだよ。石を押したり引いたりして。そりゃ体力を使うから疲れるさ。だけどその