シェア
風の吹いていないタイミングで、小汚い人家の二階の窓が、ガタガタ震えた。不気味、窓ガラス…
雲の裏で人の目にさらされていないときでも、太陽はちゃんと動いている。ネロがもたもたしてい…
やがて険しい山道に入った。それにともない、しつこくまとわりつく雪の床は、だんだんと薄くな…
無慈悲な鉄条網に行く手を塞がれた、とネロは思った。疲労感が早とちりさせたんだね。近づい…
そろそろ食事が終わりそうだったのだが、唐突に野球帽をかぶった男が大声で演説を始めた。小柄…
3 ネロはいそいそと起き上がり、いつもサルが眠っているはずの布団に何気なく目を向けた。…
部屋に戻ると、毛布が足元に丸まって忘れ去られ、布団の中が晒されていた。マリは目を覚ましていて、枕の上に頬杖をついて、昨日サルが読んでいた雑誌を広げていた。 「朝ご飯はいつも食べないの。食欲ないから」と、マリはネロの質問を先回りして答えた。「自分の欲求は、ちゃんと自分で管理してるのよ」 「でも、それで飛行訓練に耐えられる?お腹すいちゃうよ」服の捲れたところから見える、細い腰に視線を向けながらネロが訊いた。マリは驚いたようにネロを見上げると「訓練?先生もいないのに、どうやって
ネロとマリは施設の敷地の外に出るため、いったん部屋に戻って上着を持ち出した。マリはネロ…
街は、ネロが前に通り抜けた駅のある街とは違って、人の気配があった。人々は、あらゆる場…
太陽は目を離すとどこかへ行ってしまう。ネロとマリは太陽の監視を怠っていたため、昼食をと…
灯りなしで立ち入るには暗すぎる部屋の奥に、人の気配があった。ネロが灯りをつけようとする…
告白 「まずお礼を言わせて、ありがとう。私に告白の機会を与えてくれて」 暗闇に潜んでいる…
ネロは繰り返し躓きながら、自分の部屋に戻ろうとしたが、道が分からなかった。さいわい土田…
ネロは腰をかがめて視線を合わせ「大丈夫?どこか悪いの?」と、訊いた。「顔が真っ青だよ」 彼はネロの声に反応して顔をあげ、こう答えた「あんたよりはましだよ。鏡を見な」 ネロは自分の顔を手のひらでさすった。鏡はもちろん、鏡の代わりになるものも見当たらなかった。 「それより変な本だね。どこで手に入れたの?」 「誰かのノートみたいなんだ、あそこに落ちてた」ネロは石の引きずられた跡を指さした。 「くだらない遊びだよ。石を押したり引いたりして。そりゃ体力を使うから疲れるさ。だけどその