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「BTSも愛読してる韓国のベストセラー」でも、私は読まない方がいい人だったかもしれないという話

韓国で40万部を達成したベストセラーで、BTSリーダー・RMの愛読書としても知られている『死にたいけど トッポッキは食べたい』について、慢性的に憂鬱な私が読んだ感想をベースにどんな人は読まない方がいいか・どんな本か、読まない方がいいかもと思った人へについて書いた。

この本を読まない方がいい人

「死にたいけど」というなかなかインパクトのある言葉から始まるタイトルと、「もっと気楽に、自分を愛したいあなたへ」という帯コピーから、自己肯定感を上げたい・自分に自信がなくて悩んでいる、楽になりたいという方が手に取りやすい一冊ではあると思う。一方で、本書が扱うシチュエーションは、読み手の状況によっては毒になってしまうかもしれないと思った。

<読まない方がいい人>
・自分の悩みについて話す、伝えることが苦手な人
・何かしらへの依存心が強い人(酒・タバコ含む)
・カウンセリングを受けてる人、治療中の人

もし1つ2つ当てはまっても、ここ1ヶ月くらいの中で今割と元気かも、という方は読んでも大丈夫だと思う。あくまでも個人的見解だが、私自身人に悩みを話す事が苦手で、依存体質で、過去に治療経験がある為、少ししんどく感じてしまい、憂鬱な気持ちになりながらページを進めた。なぜならこの状態はこの本内でカウンセリングを受けている著者の状態そのものだから。

ちなみに私の言う「しんどい」の基準は、大好きな推しを眺めてココアを飲んでチョコパイを食べても気持ちが変わらない状態なのですが、それが2日ほど続きました。

どんな本か

『死にたいけど トッポッキは食べたい』

軽症状の鬱状態になったことがある人はどこか共感できるタイトルではなだろうか。彼氏と別れたり、推しが炎上したり、仕事で悩んで「もう死にて〜」って結構本当に思うんだけど、目の前のチョコレートには手が伸びてしまう、みたいな。食べる行為自体が生であるから、感情とは矛盾しているのだけど。そんな気分障害的な状態に慢性的に悩まされているのが著者自身である。

この本は、そんな著者が実際にカウンセリングを受け、実際に医師との対話を通して自分自身を見つめ直し、苦しみの根源と向き合う12週間が赤裸々に書かれている。

この、苦しみの根源というのがまさに巷で話題の「自己肯定感」。傷付けなくてもいい相手を傷つけてしまったり、物事を悪い方向に考えて必要以上に悲しんだり、無意識に他人と比較して凹んだり、一人じゃないのに執拗に孤独を感じたり、自分を苦しめる原因のほとんどはこれだろうなと思っている。そして、昨今韓国でベストセラーになるエッセイ本は自己肯定感・自己受容に関するものが非常に多い。(例:『私は私のままで生きることにした』『あやうく一生懸命生きるところだった』など)

思うに、著者は割と頑固だ。自他ともに認める頑固な私が言うのだから、頑固だ。医師から客観的に見て「気にしなくていいよ」と言われてもそれを素直に聞き入れられなかったり、自分を卑下する癖を一つの安心材料にしているようにも感じた。読んでいて「しんどくなる」のは、著者のそういった癖、頑固な部分を自分と重ねてしまって、自分の嫌な部分が突きつけられているように感じたことが大きい。

人生で率直な人たちの天真爛漫さに敷かれ、プラス思考の人々が書いたものを読むと、熱狂をしても本質的にそこに便乗できないと言う不安でへたり込む。
別になんでもないよと言う精神と、大いに何かがあると言う心が、互いに衝突して精神のバランスを狂わせて、狂ったバランスが崩れた表情に現れる

しかし、読み手の心にグサグサ刺さるのは、著者がそれほど赤裸々に自身の感情を正直に書いているからこそなんだろうなとも思った。また、中盤以降は自分がカウンセリングを受けているような錯覚にも陥ったのは、このような会話文で進んでいくことの没入感も起因しているように感じる。



自分は読まない方がいいかもしれないと思った人へ

暗い面をさらけだすのは、私が自由になる一つの方法だ。
これも、また私だということ。
私の大切な人々にどうかわかって欲しいと思う

本書はこのような冒頭から始まる。

そして、先に述べたような自分自身の暗い部分をさらけ出し、最後を迎える。このラスト部分が、この本を読まない方がいいなと思った人にとって少しの希望になるかもしれないと思った。

結論から言うと、この本の結末は描かれていない。強いて言えば、ずっと続く鬱状態から抜け出すのではなく、著者がどう生きたいのかという願いで終わる

よくある自己啓発本やエッセイでは、今成功している(ように見える人)が描かれる体験や思考を通して「完結(=うまくいった)」しているケースが多い。

私もこの本を読み進めていく間は、著者がどのように変わるのか(成功するのか)ということを考えていたが、
このラストを迎えた時、一瞬の裏切られた感の後には安心感があったことが印象的だった。

愛されたいし、自分のことも愛せるようになりたい・「嫌だ」よりも「いいね」と言える日を多くしたい・感情の波がある自分自身を楽しめるようになりたい

この著者の「願い」が、本書の冒頭で書かれていた「自由」であり、彼女は自由に自分に対して願うという光を手に入れたんだなと思った。

終わりの見えない憂鬱に「、でいいんだよ。」をくれる、「こうなりたいね」と希望が持てる、まるっと自分にハグするような感覚をくれる一冊だったと思う。

大丈夫、影がない人は光を理解できない





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