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第四十九話 ウェルカム トゥ ザ ジャングル

実はGoogle Mapで調べたら、今、このタマン ネガラまでの道のりは道路が開通され、車で行けるようになっているみたいです。衝撃!

さて、話しはまだ道路もまだ無い、ボートでしか行く事で出来ない時代の話。

早朝、僕らはジャングルの中へと出発。
遂にこの旅で初めて、トレッキングブーツが役に立つ時が来た。それまでは常にサンダルだったから、重い邪魔者でしかなかったのに。

歩き始めて直ぐはジャングルというより、ただの森。
道幅も広く(勿論、舗装されてない踏み固められただけの道)、初心者でも問題なさそう。
ただ、歩き続けると、段々と森の空気が濃くなっていく。

汗がジワっと滲むサウナの中に居るような湿度。
聞いた事のないような鳥達が鳴いている。
ツタが絡み、大きな大木を包み込んでいる。

ここまで来ると、日本の森とはあきらかに異質。
自然の「優しさ」というより、「厳しさ」を感じる。
同じ場所に長く居たら、自分も直ぐに森の一部になってしまいそうな程の圧倒的な力を感じる。存在感がある。
 
僕らはまずは一番簡単なジャングルトレッキングのルートを行く。
何人かの人が通っているようで、その道のりは優しい。
プルフンティアンでのジャングル探索よりも、遥かに楽だ。

途中、猿の啼き声らしきものが聞こえる。
聞いていると、何かそれぞれ違う。違うサルなのか、違う鳴き方でコミュニケーションを取っているのか。
森の事を知らない僕はには、よく分からない。

途中、キャノピンウォークといい、森の上に吊り橋が掛けられているところがある。ここを歩くと森を下に見下ろしながら、歩く事が出来る。
頭上からリス達の移動する様子を見れる。

軽くジャングルトレッキングをして周るが、浅野さんはリスもサルも見れなかったといい、ここに来たのに動物を見ないで帰るのは嫌だと言い始めた。

そんなわけで、今度はガイド付きジャングル探索ツアーに参加しました。

メンバーは僕らも入れて7人くらい。
ルートは同じく初心者向けのトレッキングコース。
そんな中、僕は現地ガイドよりも先に動物、擬態する昆虫、鳥などを次々と見つける。

それに驚くガイド。
 
「君は本当に、ここに来るのは初めてなのか?!僕はここで働いているからどの辺りに何がいるのかは知っているけど、君は何で僕より先に動物を見つけてしまうんだ?しかも見つかり難い昆虫まで!俺の仕事を取らないでくれよ笑」
と冗談も言いつつ、不思議がる(何故か嬉しそう)。
 
「え?何故かって言われても、分からないよ!ただ、そこに居ると感じるだけで。」
そういえば子供の頃、誰よりも遥かに多く、昆虫ハントしてたっけ。

しかし、そんなガイドが居てさえしても、浅野さんは動物を見つける事が出来ずでした…。
見れたのは昆虫だけだとボヤいている。
 
ガイドを付けたのはその日だけ、そこから数日間は僕らで日帰りのジャングルトレッキングを楽しんでいました。
 
 そしていよいよ今度は、遥か奥へとキャンプしながら進もうという事になり、ブンブンという、動物観察小屋の予約をする事にした。

耳で覚えている記憶なので定かではないのですが、「ブンブン ヨン」「ブンブン タハン」そんな名前だったような気がする。
 
公園管理事務所で、予約を済ませると、ベットのシーツが渡される。
一体どんなところなのだろうか?
 
まず始めは、公園事務所から一番近い小屋へと向う。
途中、血に飢えたヒル達が、僕らを察知して忍び寄る。ブーツの紐の穴、洋服の隙間、シャツのボタンホール、ありとあらゆる隙間から忍び込み、血を吸う。たまにチクッとした痛みがあるので、あ、これはヤられてるなと気がつく。
血を吸ったヒル達は数倍の大きさになっている。

ヒルの猛攻に耐えながら、僕らは小屋へと向う。
 
そして遂にブンブンへと到着。

ハシゴの上、10mくらいの高さに木で作られた山小屋みたいなものがある。
僕らはハシゴを登り、中へと入る。
すると二段ベットが数台と、テーブルがある。
 
「何だこれ!?」
 
僕はベットを見て驚く。湿度100%に近いので、マットが完全にカビまみれだ。
臭いも勿論、カビ臭い。
僕は恐る恐る裏返すが、裏は更にカビで真っ黒!
ウワっと声を出し、マットを離す。
背筋がゾワゾワっとする。

しかし、浅野さんは意にも返さず。
流石、インド帰りは違う。
 
僕はそのマットに虫除けスプレーをふんだんにふり掛け、持ってきたシーツを敷き、更にその上にシュラフ(寝袋)を敷く。これなら平気だろう。多分…。
 
小屋のテーブルには日記が置かれていた。僕らはヒルを取りながら、それを見る。
 
因みにこのヒル、そのまま取ると頭だけ残り血が噴き出す。ヤツらを引き剥がす良い方法は、タバコの煙か、ライターの火、そして殺虫剤。
このどれかの方法を持ってすればコロッと剥がれ、そして死ぬ。
 
日記を見ると色々な国の言葉で書かれている。
オーストラリア・アメリカ・ニュージーランド・フランス・イタリア・イギリス・シンガポール、そして日本などから。
英語と中国語の文字はなんとなく、書いてある事が分る。
みんなそれぞれに、ジャングルを楽しんでいたようだ。そんな文章が見受けられる。
 
しかし日本語の文章のみが違う。全てが全て、100%ネガティヴな事しか書いてないのだ。
 
「ジャングルなんて湿気がひどいし、怖いし、ヒルも沢山。もう二度と来たくないです」
「夜は真っ暗で電気もない。ここは本当に怖い所です」
「前日の雨で泥だらけ。ここはシャワーもないし、女性にはオススメ出来ません。私はもう二度とジャングルになんて来ない」
 
などなど。
まあ、ジャングルだからね。ここ。

ジャングルの中でシャワーなど浴びる事が出来ると思っていたのだろうか?そんなに大量の水が確保出来ると思っていたのだろうか?
水道管まで配備されていると思ってはいないだろうか?
電気が通ってると思ったのだろうか?

ここは動物園ではなく、完全な自然の中。
それすらも全て楽しむ余裕がないと、厳しいと思うのだけど…。
 
僕らはここで一泊し、更に奥地へと進む。

ベットはやはりダニは多かったみたいで、身体中がかゆい。一晩中、痒みとの戦いだった。確かにここは一般的な日本人には厳しいかもしれない。

朝、起きて、下に降りると、火を焚き、お湯を沸かす。
マギーという地元マレーシアのカップ麺を買い込んでおいたので、これにちょっとした野菜を入れ、卵を入れて食べる。
食べながら、今日のトレッキングのルートの話をする。
ここまでは残念ながら殆ど動物は見当たらない。
夜中に聞いた事も無いような色々な鳴き声は聴こえてくるが、一体何者なのかも分からない。
夢なのか現実なのかすら判らないようなお問い合わせだった。

さて、2日目のトレッキングもスタート。
段々と人の気配も遠くなる。最初は他のトレッキングしてる人達の声も聞こえてたが、奥に行くにつれ人の声、川を登るボートなど人工的な音が消え、森の力は更に強くなる。
 
そして次に宿泊するブンブンへと辿り着く。ここは更に高く15mほどの高さでしょうか。
目の前はジャングルが開け、見晴らしも良い。
 
今度こそ、野生の動物の観察が出来ると良いのだが。
期待に胸を膨らます。

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