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『職業遍歴』#31-3 IT企業で直接雇用の交渉をした結果

筆者が過去に経験した「履歴書には書けない仕事(バイト含む)」を振り返るシリーズ第31弾。今回は、Webライターとして働いていた派遣先で、直接雇用の交渉をしたというお話です。

31. IT企業のライター

2年前にIT企業のライターの仕事が決まり、働きはじめた話をこちらに書きました。↓

その会社でどんな仕事をしていたかという話をこちらに書きました。↓

同じチームの派遣だったMさんを切ったあとは、会社はチームに新たに派遣社員を入れることはせず、私とAさんの2人で回していくことにしたようでした。社員のCさんがチームの取りまとめや進行管理をしていましたが、Cさんの手が回らない部分は私やAさんが進行管理をしていました。また、求められるままにいろいろなことを提案したりもしました。これらは本来は社員の仕事です。派遣社員の待遇のまま社員のような業務をすることに、次第にもやもやしはじめました。

この会社に入ってから1年が経ったころ、私は派遣会社を通して直接雇用にしてもらえないかとお願いをしました。実際に社員に近い業務もしているし、派遣のMさんが突如辞めさせられるということが起こり、派遣のままでいることが不安になったからです。もちろん、派遣でなく正社員ということになったら、業務も増えます。私は自分にはできると思っていました。

この会社は派遣から直接雇用になっている人が何人かいました。だから自分にもチャンスがあるのではと思ったのです。が、甘い考えでした。派遣から直接雇用になった人たちは、いずれも若い人たちでした。職種も人事とか総務とかです。

私の意向を聞いて、会社は一応検討はしてくれました。そのために私も職務経歴書を提出したりしました。しかし、結局はいろいろな理由をつけられ、直接雇用は叶いませんでした。会社は「このチームで派遣から正社員になった人の前例がない」とか「今は会社として派遣社員を直接雇用に切り替えるフェーズではない」などと言っていました。が、本当の理由はわかっています。私の年齢と経歴のせいです。まだ20代だったら望みがあります。が、40代の私など、お呼びでないというわけです。それに、私は正社員より派遣の経歴のほうが長い。そういう人はどう頑張っても正社員にはなれません。派遣として入ったら、ずっと派遣のままなのです。

しかし、私は現に社員に近い業務もさせられています。私は派遣会社に対し、派遣のままでもいいが、時給アップをしてほしいとお願いしました。それに対して派遣先は、時給アップをするために「トライアル」をしたい、と言ってきました。時給アップをするには業務を拡大することになるので、トライアルとして一定期間その拡大業務をやってほしいというのです。トライアルの期間は元の時給のままです。トライアルをして「時給アップはできない」と判断されたら、ただ働きということになります。私はこれまでさまざまな会社で派遣社員として働いてきましたが、時給アップのためのトライアルなど、聞いたことがありません。

試しに派遣会社に、時給アップとなる場合はいくらくらいアップになるのかを聞いてみました。派遣会社は答えづらそうにしていました。私がしつこく聞くと、やっと教えてくれました。なんと、たったの50円のアップでした。

50円のアップのために、業務拡大はできない、と思いました。私はトライアルを断りました。私が断ると、派遣先の社員の方たちはなんとも言いようのない不思議そうな表情で私を見ました。「チャンスを与えてやっているのに、放棄するのか」と驚いているように見えました。社員の方たちは、私の時給アップがたったの50円ということを知らないのでしょう。

一方、同じ派遣のAさんにも、時給アップのためのトライアルの話がいっていて、Aさんは受けることにしたようでした。これには焦りました。同じ時期に入ったのに、Aさんだけが時給アップしてしまうかもしれません。

私は直接雇用の交渉をし出したあたりから、本来の業務ではない仕事も積極的にするようになっていました。仕事ができると認められれば、直接雇用してもらえる可能性があるんじゃないかと思っていたからです。私はそのことを派遣会社に話しました。

結局、派遣先もいろいろ考えたようで、私はトライアルをしなくてもすでに十分貢献してくれている、ということで、無事に時給アップとなりました。書き忘れていましたが、この会社の時給は1750円でした。50円アップして1800円となりました。Web系の案件では時給2000円超えのものも多いですから、1800円は高時給ではありません。が、紙媒体の案件の場合は時給1700円とかいう案件もゴロゴロしていますし、ライティングだけで1800円というのは悪くはない時給です。

業務内容についても改めて派遣先と話し合いました。私は本来の業務以上の仕事をしていることを話しました。社員の方たちは、私にスキルがあるため頼ってしまった、申し訳ない、と謝っていました。そこで、私の業務はここまで、という線を決めてもらいました。私はもうそれ以上の業務をしなくてもよくなりました。

時給が上がり、業務内容もクリアになり、仕事がしやすくなりました。やがて、チームに新しい社員のSさんが入社しました。新しい社員を入れるなら、私を正社員にしてくれればよかったのに。しかし、誰もそんな発想はないのです。私が直接雇用の交渉をしたことすら、もう忘れられているようでした。

Sさんはとても仕事のできる方で、私たち派遣社員への指示もテキパキとしてくれます。原稿もしっかりと読み込んでくれ、的確に赤字を入れてくれました。Sさんのおかげでチームがうまく回りはじめました。

そのころ、この会社が運営していたある媒体が終了しました。まさかこれが、自分が切られる遠因になるとは思いもしませんでした。

その媒体の編集をしていた人たちは仕事がなくなり、一時的に私たちのいるチームに入ることになりました。一時的とは言っていましたが、何人かはそのままチームに残ることになるかもしれないとのことでした。その人たちも私とAさん同様、記事のライティングをしたりしていました。

チームに社員が増え、派遣社員と同じ仕事をしはじめた。嫌な予感が現実になるのに、さして時間はかかりませんでした。

続く


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