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渡辺祐介「悪女」

ラピュタ阿佐ヶ谷で、渡辺祐介「悪女」 脚本は 下飯坂菊馬との共同。

富豪の後妻(高千穂ひづる)と我が儘お嬢(緑魔子)とスケコマシ息子(梅宮辰夫)が跋扈するお屋敷で、田舎者の家政婦(小川真由美)がいじめ抜かれた末に梅宮の子を妊娠、恋人(北村和夫)にフラれ悪女たちの姦計に怒りのライフルが火を噴いた。愛欲と裏切りドロドロサスペンス映画の佳品。

私のイメージする東映の作品とは思えない、テレビの昼メロドラマのような建付け、中でも小川真由美と緑魔子の個性強すぎ(笑)魔子の方は徹底的にエゴイストで生意気なお嬢様で通して存分に魅力的なんだけど、真由美の印象が強烈過ぎて、( ゚д゚)ポカーンとした白痴顔のお人よし。

スクリーンに何度も登場する小川真由美のドアップは、もはやアイドルのそれでは無いし、悪女ですらないw私は無知で何でも人のためになることをするんです!という田舎風情の家政婦がとことん自分道を極めたらとんでもないことしちゃいました!という真由美自作自演のとんでも映画w

真由美は終始、訛りのきつい言葉を喋っていて、それが上流階級の傲慢に立ち向かうピカレスク映画の緊張感を絶妙に緩和してるのよね。方言は東北だと思うんだけど、北村と出会うパンスケ時代のドライブインも栃木にあったようで、北村の方言だって半分何喋ってるか分からないので、スゲエ癒されるw

ところで誰が悪女か?って話ですけど、緑魔子と高千穂ひづるの母娘はお互いに腹黒で嫌味な女で悪女決定なんだけど、お人好しで世間知らずの真由美が最後まで悪知恵なんて一切働かせずマイペースで妊娠して腹の子を渡せお前は家を出てけと追い詰められてどんでん返しで悪女化しちゃうのw

もうね、真由美はブルジョアのイヤな奴にとことん踏みにじられてドイヒ~な目に遭い続けても根がバカなのかも知れぬ、恨んだり復讐したりとか考えないんだよね。その代わり、キョトンとした顔がスクリーンに何度も大写しになって、観てる方も感覚が麻痺して思わず笑っちゃうんだw

話としてはブルジョア当主の爺さんはイイ人なんだけど、金目当てで後妻に入ったひづると自由気ままに青春を謳歌する魔子の二人は腹が真っ黒黒の悪女で、おまけに色男の梅宮辰夫、魔子の兄なんだけどこいつが女とセックスに目のないスケベ野郎で、こんな家になんで働き口求めたんだ真由美w

ピリリと効いてる影のボスが家政婦紹介所長の杉村春子で、真由美がとんでもない酷い目に遭うたびに「考え直してくれないかねえ」まるで女郎屋の楼主のように真由美を家政婦の世界から外に出さないんだよね。よく考えれば勝手に辞めりゃいいんだけど抜群の説得力で説得するんだw

真由美が働く家政婦の同僚の浦辺粂子もイイ味出してる。もはや虐められるとかそういう次元を超えた淡々と仕事をする人で、真由美が辞めたいと言っても「じゃあ、私はどうなるんかえ」と泣きついて真由美を辞めさせない。真由美が家政婦沼にハマるのは杉村春子と浦辺粂子のせいだw

ドライブインでパンスケになるはずだった真由美を救ったぶっきらぼうなトラック運転手で、恋仲になる北村和夫。いやあ、まだ30代で若いわあ。私の世代ではもう黒縁メガネかけたおもろいおっさんのイメージしか無いので、こういう青春風味ドラマのメインで観るの、とても新鮮!

ザックリ言えばね、財産相続を考えて姦計巡らす、ついでにスケコマシの息子とレズの娘の暴走の清算まで、一手に責任を押し付けられた真由美が「ふざけんじゃないわよ!」ライフルぶっ放す爽快感かと言えば、刑務所に収監され娘を出産する、因果応報になってないダークなドラマ。

観ていて真由美いじめにクラクラしそうになるところを救われるのはそんな真由美自身の( ゚д゚)ポカーンとした白痴顔。よくアイドルはわざとキョトンとした顔をして異性の関心を惹くと思うが、真由美の場合は笑いを取ってる。計算してるか分からんけど、それでバランスが取れてるw

あ、そうだ!東映ポルノ的にはですね(まだ始まってないんすけどw)「二匹の牝犬」とか本作とか濡れ場はこってりあるのよね。乳首を映さない、結合部を映さないだけで。抱き合ってる上半身にヨセて次のシーンに移っちゃう場面が多い中で、真由美が梅宮に犯される段取りだけ格別。

深夜のプールでバカ騒ぎする魔子たちブルジョア男女の集い。色男が「負けたら裸になるゲームしようぜ」トランプ取り出し魔子が「乗った!」でも負けてwレズ友が心配する前で魔子は「私の奴隷にハダカで泳がせてやるわ」宣言。人身御供のように真由美が連れ出され全裸に剥かれそうに!

真由美は服がびしょ濡れになる位で(あ、これオールモノクロです)梅宮が「なんて酷いことをするんだ!」真由美を助けて部屋に入れ、間髪入れずレイプ。組み敷いてガンガン犯す鬼畜の所業は露出度が低いのどうの言う前に、これで興奮したら人間じゃねーだろ!ドイヒーなレイプ現場。

さて(さて、じゃねーよw)ちょっと鈍感でおバカさんな真由美をひづるは基本無視、魔子はからかったりいじめたり、そんな日々が続くが「いい人たちばかりですよ」杉村所長に報告する真由美はリアル天然w彼氏の北村と結婚するために処女を守り金を貯めて頑張って働いていたというのに!

梅宮のレイプで真由美の幸せ、全部パーですよ!北村の実家に挨拶に行った日、つわりになって妊娠が発覚、北村とはまだ一回もヤッてないから当然、激怒するわなwで、捨てられて真由美どうする?と思ったら再び魔子&ひづるのお屋敷に復帰するんだよね。嫌味を言われながらも。

ここでね、事件が起きるんです。魔子ってひづるが梅宮とこっそりデキてたの覗き見していて(短いけどひづるたんのFUCKシーンあるよ!)真由美が梅宮の子を孕んだならこれはチャーンス!とばかり、まずは梅宮の別荘に真由美を住まわせる。真由美は当然、梅宮の女になったつもりだ。

ひづるは夫の死後に財産が分捕れればそれで全てヨシなんだけど梅宮との浮気がバレたら困る。で、ひづると梅宮の目標は一致する。真由美に子供を産ませてこの家に引き取れば、万事何事も無かったように収まる。でもね、魔子は真由美のような下賤な血をこの家に入れたくない。おまけに当主の爺さんが真由美を養女にするとか言い出した。

梅宮の別荘で、騙されて恋人のようにアツアツの時間を過ごす真由美が哀しい。で、湖にボートを出して夜のデートの最中に底が抜けて水が入って来て転覆しそうになって、これ幸いと梅宮は真由美を突き落とす。溺れる真由美を見殺しに別荘に戻った梅宮は、やっと余計な女を始末できたとホッとしたところ。

ここにライフルを持った真由美がずぶ濡れで立っていて、梅宮の胸をズドン。絶命する梅宮の姿を駆け付けた魔子とひづるは呆然と見つめ立ち尽くすばかり。「私は出頭します。この家を出て行きます。子供は自分で育てます」刑務所に収監された真由美は可愛い女の子を無事に出産した。

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