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西村昭五郎「花を喰う蟲」

シネマヴェーラ渋谷で、西村昭五郎「花を喰う蟲」 原作は黒岩重吾。 脚色は中島丈博。

ハマの不良少女(太地喜和子)が刑事に逮捕されそうになった時、偶然知り合ったニヒルな中年ダンディ(二谷英明)と恋に落ちるが、フィクサーの彼によってコールガールに堕とされた、ブラック・マイ・フェア・レディ。隠し撮りがトリックとして見事に機能、スタイリッシュなサスペンス映画の佳品。

凄く面白いんだけど、同時に観ていて肩が凝る感じも。100分近くも尺があるのにメリハリに乏しく登場人物たちのヒールな部分だけが前面に出てぶつかり合い、実はマイ・フェア・レディなんかじゃ全然ない、元妻と元上司に裏切られた二谷の復讐譚なんだけど、でも空回りして頭に全然、入って来ない。

この作品を観てると、大和屋竺が遺したシュールで奇想天外でスタイリッシュな娯楽活劇の傑作群を思い出す。大和屋作品にはクスッと笑えるコミカルな部分とか、哀愁を誘うメランコリックで抒情的な場面も織り込まれてたけど、本作はそれが全然ないんだよね。だから観ていて疲れるw

それを補って余りあるのがヒロイン太地喜和子のコメティッシュな魅力で、村川透「白い指の戯れ」の伊佐山ひろ子みたいに理屈なんて不要、存在自体がチャーミングでエロティックな女性を演じてる。ダンディな二谷を以てしても喜和子の引き立て役で、これはロマンポルノだ!

再見して思ったこと。二谷英明の復讐譚がメインプロットだったのかよwwwすっかり二谷の手によってイイ女に磨かれていく喜和子の成長を描いた、谷崎潤一郎が書きそうな女たらしの男とそんな男に惚れてしまう女の物語と思ったら全然違うじゃん(笑)思い込みとは怖い物だw

同時上映の鈴木清順「殺しの烙印」の方が一見するとプロットが分かりにくくて難解とされるんだけど、本作の方がプロットが分かりやすいってウソだろwwwこの作品、中島丈博の書いた脚色のうちどこまでが実際に映像化されたんだろうか?スキップ、ジャンプで凄くヘンな展開w

まあ、太地喜和子を愛でるアイドル映画にしてロマンポルノ、おまけにレズビアンの梶芽衣子まで登場して喜和子とベッドシーン(*‘∀‘)これだけでええやおまへんか、と西村監督の声が聞こえてきそうなほどエロに舵を取ってる。これで干されたとしたら西村監督が不憫すぎるw

監督が西村昭五郎で脚本が中島丈博で撮影が安藤庄平で音楽が山本直純。こんだけ揃ったらもうロマンポルノにしかならないだろw太地喜和子はなかなか乳首見せないけど(←当たり前)体当たりでスゲエ濃厚な濡れ場演じてて、クライマックスの大好きな二谷と結ばれる時の高揚感!

二谷がフィクサーたるゆえん、それは隠しカメラを駆使して恐喝すること。でもホントはフィクサーと言う程のもんでは無い。かつて勤務していた大手商社の社長(清水将夫)に愛妻(月丘千秋)を奪われ、その二人に復讐するべく隠しカメラで千秋と清水のスキャンダラスな姿を撮影。

二谷の造形がイマイチよく分からないんだよね。描写不足としか思えないんだけど、ファッションモデルの斡旋会社を表向き経営し女性たちに売春させて、所有するボートで恨み骨髄の元妻・千秋と清水社長をハメる。精神分裂病者のように見えるんだけどw全て喜和子目線だから。

この作品がまんまロマンポルノに見えるのは撮影や劇伴のこともあるんだけど、ヒロイン絶対目線で撮ってることにあると思うんですよね。男たちは文字通り女という花を喰おうとする蟲たちでしかない。喜和子だけずっと女として磨かれどんどんキレイになって終わる、そんな映画。

私が本作で「おお!」と思った印象的なシーンには須らく隠しカメラで撮った8mmフィルムが漏れなく絡んでおりますwロマンポルノで西村監督は作中にブルーフィルムを効果的に挿入する意匠を何度も使ったけど、その先駆けなのかなあ。それだけ振り返っても映画になっちゃう。

二谷英明が、所有するヨットのクローゼットに仕掛ける隠しカメラ。これでまず撮影するのは俺を裏切った憎き元愛妻の千秋が、スカウトした元喜和子のハマの不良仲間・郷鍈治と濃厚FUCKしてアンアン喘いでいるブルーフィルム。喜和子は元恋人の郷が出演してることに大層驚いたw

次に二谷がハメようとするのは浜村純。鉄道が通るという土地を欲に目がくらんで買いあさった我利我利亡者に喜和子の身体を提供。ところが喜和子はヨットの船室に隠しカメラの気配を感じ、クローゼットをスパナで無理やりこじ開けようとして、中から二谷が「ばあ」と登場w

モデルクラブに所属していた喜和子は二谷に規律違反(←でもこれ、人身売買だろw)で干され、国立競技場のだだっ広いスタンドで二谷の手のひらの上で喜和子は転がされてるだけ、全ては二谷の掌中にある、と一旦は見せておいて、実はニヒルな二谷は既に世捨て人であった。

二谷が最後にエンタメとして企画する上映会はブルーフィルムではなく、憎き最大の仇・清水社長が浜村純を刺殺するスナッフフィルムwwwロマンポルノと違ってハダカ縛りが無いので、自由度があって楽しいよなあ。エロに特化した後はスナッフフィルムは禁止されたのかな?

一度は喜和子に拒否られた浜村が今度こそ抱ける、とヨットの船室に入ると待ち構えるのは清水社長www自然、鉄道路線開発で土地の値段が上がる詐欺の被害に遭った浜村が清水に対して怒りをぶつけ激高、そのままスナッフフィルムが撮れそうないい温度に仕上がって来ましたw

浜村は喜和子じゃなくて清水社長が出てきた時点で、隠しカメラの先にいる二谷を探そうとするんだけど当然、無反応の二谷wじっくりと浜村が清水社長を刺殺する衝撃ビデオを撮影し、誰に見せるかですって?そりゃもう、清水社長自身にですよ、もみ消しを図れないようにするw

清水社長は浮気三昧の千秋が殺害され、実はヤッていたw浜村が無理心中していたという筋書きで逃げようとする。喜和子は清水社長の一人息子花ノ本寿(←武智鉄二「黒い雪」で有名な方)と婚約者の梶芽衣子(本作は太田雅子名義)をたらしこみ、清水社長の逃げ口を塞いだ。

喜和子はスレンダーなのにグラマラスな肢体で花ノ本をセクシーノックアウトか?と思いきや照準を定めたのはお相手の芽衣子の方(笑)実はレズビアンだった芽衣子、喜和子のキュートな笑顔とエロい肢体に大興奮!芽衣子がまだイケてないイモっぽいのが逆にリアリティ感じる!

二谷はじっくり準備を積み上げて自家製スナッフフィルムの上映会。これを見せられた清水社長はグウの音も出ない、花ノ本はヨットをパパに買ってもらうはずが、まさか殺人現場でペンキを塗って証拠隠滅しようとしてたなんて幻滅!さて、ここまで来て、あれ?郷はどうした?

二谷がホテルの部屋に入った途端、「好きだったの!」抱き着く喜和子にカタルシス!そして、来たよ、来ましたよ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!両想いの喜和子と二谷が正常位でガンガンFUCKする物凄くエロくて幻想的な濡れ場。オールモノクロなのが残念で仕方が無い。

喜和子と二谷が全裸で正常位FUCKする映像に、喜和子が一人で悶えている映像と、喜和子の悶える顔のアップが万華鏡の様にスクリーンの中に花開く、そして山本直純のロマンポルノですっかりお馴染みの劇伴が花を添える、まさにこれ花を喰う蟲。二谷だけでなくスタッフも観客も!

全裸で抱き合う喜和子が感極まって「私、あなたみたいな男に生まれたかった」二谷も「俺は女に生まれたかった、お前みたいな」私は瞬時、村川透「白い指の戯れ」で伊佐山ひろ子が荒木一郎に抱かれながら呟く「おんなに、生まれて、よかった」思い出した。対をなす秀逸な台詞。

全裸でまぐわう二谷と喜和子の部屋にドンドンドン!けたたましくノックする音が聞こえ、飛び込んできました郷鍈治(←遅かったぞ!)郷は二谷をナイフで刺殺。あっさりと刺される二谷は郷の喜和子に対する熱い思慕を知ってのことだったのだろう、花を喰う蟲たちは全滅した。

花を喰った蟲たちはいなくなったけど、当の花たちは元気だぜ。ベッドの上で熱くFCKする喜和子と芽衣子(←マジかよw)芽衣子は喜和子の裸をうっとり眺め「愛し合うだけで良かったのに」喜和子のために用意しました宝石まで売り払って用立てした1千万円で喜和子は逃亡!

二谷が清水社長に売り払ったはずのヨット。主のはずの清水も花ノ本も芽衣子もいない。喜和子のこれまで取った言動は清水に勝手に曲解されファッションモデルのとんでもない醜聞として週刊誌に暴かれたけど、海外に向かって高跳びする喜和子はビキニで日光浴、何も気にしない!

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