城定秀夫「女子高生に殺されたい」
2022年4月チネチッタ川崎で、城定秀夫「女子高生に殺されたい」 原作は古屋兎丸。
出生時のトラウマから絞殺されたい願望を持つに至った教師(田中圭)が、9年越しの標的に選んだ解離性同一症候群の女子高生(南沙良)夢を叶える赴任した高校の文化祭で舞台劇を利用して凶行に走ろうと画策、エロスとタナトスの葛藤を描いた、サイコサスペンス異形の秀作。
タイトルから「これ、女子高生に殺されたくて教師になった変態オヤジの話なんじゃない?」と連想してしまいますが、まあ、大体その通りです(笑)ただ、変態教師の彼、田中圭はイケメンで女子高生たちにモテモテなので、非モテ男子には付け入る余地などございませんw
大学時代に心理学を専攻した私がエラソーに言いますがw心理学を理解してるとスゲエ面白いですよ、これ。何が面白いって、自分自身が精神に不安や不調を感じてるから心理学を専攻に至った田中圭。俺の学生時代と全く同じ動機じゃねーかwこのパターンロクなこと無い。
心理学の中でも、フロイトのバーストラウマ理論はのめりこむと結構ヤバイw幼児期に両親に虐待されたトラウマがそのまま大人になっても残ってしまうと、幼児性が心に棲みついてしまい、その悪魔と戦うのです。だから、正面切って克服する方が良いとばかりに限らない。
田中が赴任した高校の女子高生キャラが4人とも立っていて、一人一人の個性が田中先生をも凌駕する位にトラウマ理論な病理的精神の物語が背景にある。思春期の教室の危うげなハーモニーを戯曲に乗せて女子高生たちは「櫻の園」ばりに頑張るが田中にはどす黒い欲望w
主演の南沙良は一人三役を熱演するので、まあ劇場で直接観て下さい(noteにはもう少しきちんと感想書くが、彼女の演じるキャラを説明すると、まんまネタバレになる)田中先生より沙良の方が明らかに病んでるんじゃね?途中で気づくが、そんな沙良ちゃんに殺されたい!
完全に精神病んでる田中先生を軽々と凌駕、アスペルガー症候群の眼鏡少女を演じる河合優実がこの映画の実質的な主演だと思います!小学生の時にバイ菌が罹るとマイムマイム踊るのを拒否られ、ランドセルを隠された超虐められっ子だけど、地震が予知できるスゲエ奴!
イケメンと見れば見境なく発情するヤリマン女子の莉子も、オッス柔道で身体を鍛える不器用女子の茅島みずきも、ホントにイイキャラだなあ、おい(笑)アスペルガー優実も含め、高校生ってみんなこの時期、精神病んでたよねえ、ホントは無かった現実を妄想してしまうw
でもね(←でもね、じゃねーよw)城定監督の手腕を以てすれば、110分も尺がある訳だし、もっと話が整理された見ごたえある心理劇に出来たんじゃないかなあ、という不満は残る。観る前のハードルが高かった分ガーリーな学園ものに引っ張られてしまい、肝心の心理劇がなんだか中途半端なのだ。
原作漫画を読んでないので、このキャラがどこまで重要人物だったのか分からないけど、城定さんは大島優子を登場させて上手く話をオトしたと思う。モチーフになる青、赤二色の空飛ぶ風船と合わせ、大人の世界を構築することで学園ドラマの成長途上の少女と対比してる。
学園祭当日に、田中と優子が対話する部屋の窓の外に、浮かぶ青赤二色の風船がくっついて、赤い風船が青い風船をパンと割ってしまう光景。それが田中にとってどう見えたのか?優子にとってどう見えたのか?心理学のロールシャッハテストのように、二人の過去を示し未来を暗示している。
思うに城定さんってエロVシネ時代から一貫して、自分でオリジナル脚本書いた時の方がキャラもモチーフも話のオトし方もブレなくハーモニーが構築されてるけど、原作やホンが他者だとキャラにもモチーフにも一旦ブレが生じて、これを強引に上手く話をオトしていた気がする。だから、こういう展開は初見の気がしない(笑)
冒頭から、沙良と優実がスゲエ仲良しで、二人揃って私好みの内気そうな美少女(←お前の好みはどうでもいいよw)一つ気になる点があるとすれば、優実は言動が明らかにおかしくて「病気じゃね?」と心配になるけど、ホントに病気。彼女は虐められっ子でずっと沙良に守ってもらっていた。
さて、新しく赴任してきた田中先生、歳は30代でハンサムで独身、多感な少女たちはキャーキャー騒いで「田中、田中」と呼び捨てw中でも彼にお熱なのが惚れっぽい莉子で、スキを伺ってるwそんな田中のどす黒い野望。それは9年前に遡る。8歳で女児イタズラ目的で家宅侵入したオヤジを絞殺した謎の少女の事件に取り付かれた男・田中。
当時、心理学を学んでいた彼は心理カウンセラーとして病院のインターンまで行ったのに、教師の道を選んだ。同時に、当時交際していた心理学教室の学友・優子を理由も告げずフッた。何故に彼がそこまでして教師の道にこだわったのか、それは「女子高生に殺されたい」からだ(←タイトルの通りwww)
後々、ネタ割れしていくので、映画観る前にネタバレすんなよ!とクレームする向きには、ここで読むの辞めて下さい(笑)沙良こそが、その8歳でオヤジ絞殺した謎の少女だった訳です。彼は20代の半ばにインターン生活送っている時に同棲中の優子と一発ヤッて(←大島優子の濡れ場見られたの、スゲエ大満足(*'▽')
その後、事件報道を観て、神の啓示がピカッと落ちたんですね。彼はバーストラウマでへその緒で首を絞められて窮屈そうに生まれて来た。母親に買い物中に放置される事件が重なり、傷ついた彼の心は閉ざされたまま勉学に向かってたんだけど「大学になったら心理学学んで俺のトラウマ解明したい!」と思ってたところに、この怪事件報道。
それからの9年間、彼はずっと「女子高生に殺されたい」と念仏のように唱え続ける訳です。なぜ女子高生なの?それは8歳の少女が9年経つと17歳になるから。男子じゃダメなの?ダメです、あの少女の成長した姿がイイんです!彼は教員資格を取って沙良が通う高校のポストの空きを狙った。
教え子と交際していた教師のスキャンダルをばらし代理で教員に滑りこむと「遺跡部」を新設。これも沙良が遺跡好きとリサーチしてのこと。でも一緒に遺跡部に入る優実は違う「あいつだ、あいつがやって来たんだ!」沙良を守るため同時入部する彼女が知っていた秘密、それは沙良には3つの人格がある。
一人は「真帆」もう一人は「カオリ」沙良は幼児期に母親の虐待を受け、普段は優しくて内気な優等生の真帆だが、怒りで手が付けられなくなると別人格のカオリが現れる。でも狂人・田中が9年間、目の前に登場するのを待ち望んだ第三の人格「キャサリン」
それは8歳の少女が突然、凶暴に豹変して電気コードで暴漢を絞殺した時、テレビ映画で流れていた「エミリーの恋人」でヒロインが絶叫する「キャサリン!」の台詞スイッチであった。田中が追い求めていたのは、女子高生に殺されることではなく、キャサリンに絞殺され、官能的な最期を遂げることであった。
そして彼の計画は着々と進み、文化祭で出し物「エミリーの恋人」ヒロインは莉子、相手役の男子やエリーゼはもう誰でもいいや、関係ない。田中はクラス内投票で不正行為してまでも沙良にキャサリン役を当てはめた。しかし計算外の事態が起きる。学生時代に別れたはずの恋人・優子が学校に心理カウンセラーとして赴任して来てしまったのだwww
優子は事件が起こりそうなキナ臭さをw感じ取っており、予知能力のある優実から情報を仕入れるなどして、田中の陰謀を暴いていく。沙良は淡々と舞台劇の稽古をしていたが、田中が当日を待ちきれず、わざと拍子に抱きかかえると「お前、何を企んでるんだ?」真帆からカオリに豹変し、田中の悪事を予知する沙良。
そして文化祭当日、田中の悪事(←っていっても、完全犯罪で絞殺されようとしてんだけどw)を止めようと直談判する優子。窓から青赤の風船がくっつきパンと割れて、田中は「俺がキャサリンに殺される最期」を想い、優子は「私が田中を傷つけてしまった過去」と「田中の悪事を阻止する自分」を想った。
でも田中はもう止められない、優子がコーヒーに睡眠薬を入れたことを悟り、入れ替えて優子を眠らせ、文化祭りで最大の出し物、戯曲「エミリーの恋人」が上演、さ、されない・・・幕が上がらないのだ。これまで沙良のキャサリン化を試すためにけしかけた犬を退治したばかりに犬を死骸をネタに莉子に虐められたみずき。
みずきは、ここでも良いように田中に利用され腕力で幕を上げ、この幕が自動的に落ちる瞬間、田中はキャサリンに絞殺される仕掛けとなっております(笑)で、淡々と進む舞台劇、エミリー役の莉子が「キャサリン!」と叫ぶ前に進行を阻止せねば、と現場に急行する優子。
ここまで存在感の薄かった細田君が大活躍、田中の悪行を知って「俺が殺してやる!」目を剥いて怒る田中の「俺は女子高生に殺されたいんだ!」もうパラノイア入ってるw田中の悲痛な叫びに、ここは爆笑!段取り通り、着飾った莉子が舞台上で「キャサリン!」と叫ぶが、同時に腐った天井床板を踏み外し、ステージに首吊って落ちて来る田中先生の無様な姿に失笑wwww
でも、戯曲を見ていたら突然、田中先生が首吊って落ちてきたら、それこそトラウマもんだろ(笑)キャーと悲鳴を上げて逃げまどう観客席こそ修羅場。そして、田中は入院した。優子が見舞いに訪れるが、何も思い出せない、記憶喪失の田中にホッと安心した優子は「これからゆっくり思い出していけばいいのよ」でも、見舞いに訪れた沙良の顔を見て、徐々に記憶を取り戻した田中は、無音で「××× ×××××」と呟いた。
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