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いまおかしんじ「海辺の恋人」

シネマート新宿で、いまおかしんじ「海辺の恋人」 脚本は宍戸英紀。

下積みのカメラマン助手(フミカ)と売れない大道芸人(小林優斗)が運命の出会いからの同棲。小林は金も稼がず先輩の借金をフミカに申入れ、リーマン生活は返済とセフレ関係の終焉に繋がるが、その後の二人は本来の夢だった道へと再生する、ドラマチックな人生応援歌。

恋愛至上主義、結婚至上主義に対するアンチテーゼのような作品である。出会った男女にはどちらも大志がある。同棲して愛を育むことはできるが、必要以上に束縛されることは夢を叶えるための障害になる。無理して生活のために夢を一時的に諦めることは不幸の素なのだ。

ヒロインのカメラマン助手を演じるフミカは「農家の嫁は、取扱注意!」で鮮烈デビューを飾ったが、本作ではすっかり余裕みたいなものを感じる。自然体で仕事と恋の両立に悩み、ダメンズに振り回されながらも自分の夢を諦めずしっかりと自立する、魅力的な女性を演じてる。

対して小林優斗は、本作がいまおか監督の若き日に実体験した出来事を題材にしてるということで、いまおか監督の化身ですね(笑)ダメンズぶりが板に付いてる一方で、フワフワとした捕えどころのない不思議な魅力が存分に発揮されていて、女性は構わずにいられんだろうw

キーマンとなるのは、一流の大道芸人を目指す小林にとって目標とする先輩で、事故で車椅子生活になって、それでも大道芸の都エジンバラを目指す美談のはずが観客まで一杯食わされてしまう飄々とした持ち味の浜田学。彼の犯した罪がフミカと小林の恋愛の原動力になる。

もう一人、フミカの職場の上司、というよりも加納典明を師と仰ぎ女好きを公言するカメラマンの永岡佑。芸能界ってこんなサイテー男がたくさんいるのかね。パワハラ、セクハラなんでもあり、なぜフミカがこんな男に弟子入りしたのか?それが本作で最大の謎であります(笑)

タイトルにある「海辺の恋人」とは、カメラマンとして一本立ちしたフミカが初の個展で目玉商品として掲示する芸術作品なのだが、それはフミカが初めて小林に出会った頃の、お互いを撮ったスナップショットを二枚並べただけのもの、極私的な写真芸術はアラーキーっぽいw

いまおか監督は最初、本作を「高円寺の恋人」にしようかと思ったがそれではあまりにナマナマしくて自分でも撮っていてしんどいから海辺に変えたらしいwでも海辺って画になる。砂浜で恋人が夜の闇の中で手を繋いで花火に興じる、儚げな美しさは青春のきらめきを感じる。

冒頭、永岡カメラマンが女性モデルの写真撮影を公園で行っていると、大道芸の練習している小林が何度も写り込んでしまう。助手のフミカに交通整理が出来てないと説教を垂れる永岡に言葉を返せないフミカ。実は彼女、女なら誰にでも手を付ける永岡と寝たことがあるのです。

海辺のマンションに住むフミカは窓から海を眺めていた時、大道芸の練習している小林を見つけ、スナップショットを撮った。それだけで終わると思われた関係は、しじみがカウンターレディをしている行きつけのバーでフミカが飲んでいる時、永岡がやって来て急変する。

ヨリを戻そうとしつこく迫る永岡に対し、そもそも付き合ってないと抗弁するフミカの目の前に偶然、小林も飲みに来た。慌てて出ていこうとする小林に頼むから一緒にいてくれと頼むフミカ。永岡と小林は必然、罵り合いの喧嘩になり、倒れた小林をフミカは申し訳なく思う。

フミカは小林を夜の浜辺に連れ出した。花火が落ちていて、しけっていて着くか分からなかったけど、火を着けたらキレイに咲いて、二人ははしゃぎながら花火した。そしてキス、部屋に雪崩れ込み、二人は同棲を始めた。そんなフミカの部屋にまたしても永岡がやって来るw

永岡はモデルの女性に手を付けて奥さんに勘当されたらしい。で、フミカ、お前しかいない!とwフミカは毅然と永岡を追い払い、小林との同棲のケジメとして永岡の助手を辞め、しじみのバーでカウンターレディを手始めに複数のバイトをこなしながら小林を養ってあげた。

ところが小林、芸に行き詰まり酒を飲んだくれてフミカは激オコ!終いにはフミカがバイトするバーに「様子を見に来た」と言い出す始末。ここで小林の目を覚まさせる大道芸人の先輩・浜田が未成年の助手と車椅子で大道芸をして拍手喝さい貰う瞬間で小林は俄然ヤル気に!

浜田はエジンバラに大道芸の修行に行く、そのために金が足りないと後輩の小林に無心。小林は恥を忍んでフミカに頭を下げ金を借りる。エジンバラに飛び立つ飛行機を見送った後、憮然として海辺を歩いているフミカの表情を、小林はシャッターチャンスと思い撮影した。

ところが浜田はとんでもない野郎で、エジンバラになんか行かず、未成年の助手と飛んだwフミカは激怒するが、小林はここが踏ん張りどころと会社に就職し金を稼いでフミカに返済。一方のフミカはカメラマンの仕事に復帰し別の女性先輩と再び夢を追いかける日々が始まった。

フミカは妊娠中の女性を撮影しながら「私なんてとても結婚して子育てして、なんて無理ですけどね」と笑った。一方、バーの女しじみはとんでもない悪女で、かねてからずっとフミカと小林の痴話喧嘩を闖入者の永岡込みで楽しんできたのだが、ついに決戦の日は来たようだw

フミカが小林と同棲し始めて最初に迎える冬。寒い寒いと言いながら黒のどセクシー下着姿のフミカは後ろにクルリと回るとTバックのパンティが超エロい!そのままベッドにもぐりこんで二人して身体を温め合う小林とフミカは心も身体も溶け合った恋人同士に思えたのだが。

一人でバーに飲みに来た小林を、しじみは「私と寝てみない?」と誘惑。自宅に連れ込んでベロチューすると、バックからパンパン突かれて咆哮、体位を正常位に変えてガンガン突いてる小林も気持ちいー状況で、お前は節操というものがないんか!この悪事はすぐにばれるw

悪女しじみは、今はカメラマンとして飲みに来たフミカに「私、小林と寝たわ」とリーク!帰宅したフミカは小林を問い詰めることなく「別れましょう」「でも、付き合ってたつもりもないけど」小林はこの一言に大ショック。金を全て返済し「じゃ、セフレ関係解消ってことで」

カメラマンとして成長を遂げ、独立を果たしたフミカ、夢だった個展を開くことになり、小林を誘ってみようと思いしじみに案内状の言伝を頼むが当然ながらしじみ、ビリビリに破ります(笑)でも小林、ちゃんと職場でスマホ見ながらフミカの個展の件、承知してました。

永岡がまたフミカの元にやって来る。今度はモデルに訴えられたとかで写真週刊誌に載るらしい(いい加減に懲りろよw)小林は道端で飛んだはずの浜田を見かけ追いかけるが「未成年の助手が持ち逃げした」言い訳に「あんたは浜田さんに似た別人だ」そっけなく場を去った。

フミカの個展の目玉は「海辺の恋人」と題された、マンションの部屋から地上で大道芸する小林を撮ったスナップショットと、海辺でふくれっ面から一転しておどけたフミカを撮ったスナップショットを並べた、フミカと小林の蜜月時代、カメラマンフミカの原点なのであった。

小林はフミカの個展に駆け付けたかったが強引に残業をねじ込む上司にブチ切れた会社を辞める宣言し、ようやく個展に駆け付けた時には終了時間の7時を回っていた。路上のフミカを見つけた小林は号泣しながらフミカを抱きしめ、二人は恋人の関係以上の何かになった。

小林は会社勤務で貯めた金を元にエジンバラに旅立つことをフミカに報告。浜田先輩の続きに俺はなるのだ、と。売れっ子カメラマンとしてバリバリ仕事しているフミカも小林の冒険を応援、こうして二人は東京とエジンバラで離ればなれの時が5年過ぎ、再会はあの公園だった。

フミカが撮影していると、スタッフが「大道芸をしている芸人がいます」と言う。行ってみれば、大道芸大会世界第三位の勲章を持って、小林が難度の高い大道芸を披露して拍手喝さいを受けていた。「ガンバレ!」エールを送るフミカに、小林「お前もな!」エールを返した。

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