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森崎東「喜劇 女は度胸」

2019年2月岐阜ロイヤル劇場で、森崎東「喜劇 女は度胸」 原案は山田洋次。脚本は大西信行との共同。

森崎監督デビュー作で倍賞美津子初主演作。主人公は青臭い文学青年河原崎健三。でも実質的な主役はその腹違いの兄渥美清。下町の東京蒲田を舞台に長屋住まいの家族と集団就職の若者たちを描いた笑って泣ける傑作。

印象的に使われる2曲。岡林信康「くそくらえ節」と新谷のり子「フランシーヌの場合」どちらも本人の歌唱ではない。集団就職で電機工場に勤める倍賞美津子が、偶然知り合った文学青年の河原崎健三を連れて行った先の歌声喫茶で、若者たちがギターに合わせて熱唱するのである。

劇中で歌声喫茶だけでなく、男女のロマンチックな場面で何度も使用される「フランシーヌの場合」パリの路上で女性が政府に抗議し焼身自殺した事件を歌った歌 ♪フランシーヌの場合はあまりにもおばかさん フランシーヌの場合はあまりにもさびしい♪

歌声喫茶で勤労青年たちが大合唱する「くそくらえ節」私の世代にはもう死語だった「連帯」とか「共闘」を感じる歌詞♪くそくらえったら死んじまえ くそくらえったら死んじまえ この世で一番偉いのは電子計算機♪ 会社側の人間と労働者側の人間、はっきり二分されていた時代。

主人公の文学青年(河原崎健三)は家族が大嫌いだ。飲んだくれの父(花沢徳衛)黙々と内職ばかりの母(清川虹子)無学で好色な兄(渥美清)健三は偶然出会った女工(倍賞美津子)と恋に落ちる。ゲーテの詩集を彼女にプレゼントするが、その詩集が思わぬ問題に発展する。

兄の清はせっせとコールガール(沖山秀子)通い。なぜか無学な清がゲーテ詩集を読んでいるのを不審に感じる健三。清は和式トイレに詩集を落としてしまう。健三はせっかくできたガールフレンドの美津子がコールガールではないか、と疑い始める。そして事実を確かめに動く。

蒲田でひっそり営業している今川焼屋(有島一郎)彼の裏の顔はコールガールの手配師。いつも清はこの店で手配してもらい秀子の下宿(彼女は美津子と同じ工場の女工w)を訪れていた。秀子は美津子からゲーテ詩集を借りて読み、それをうっかり清に手渡してしまったのだ。

秀子の下宿を訪ねた健三は同じ下宿に住んでいた美津子をコールガールと勘違い。健三のプロポーズにイエスと言ってくれた美津子を振ってしまう。絶望し田舎に帰ろうと思った美津子。でも健三の勘違いが発覚。詫びるが今度は美津子の腹の虫が収まらない。

健三は嘘をついていた。家族と不仲だった健三は「俺は家族なんていない」と言っていたのだ。ところが美津子が家を訪れると、父も母も兄もいる。そして、兄の清は同僚の秀子と恋仲ではないか。能天気に「結婚したい」と美津子と秀子にプロポーズする健三と清の脳天気兄弟。不安が募る美津子と秀子w

青臭い自分勝手なことばかりグチグチ喋る健三に美津子の鉄拳が何度も飛ぶ「こんな人と結婚して大丈夫かしら」ここで沈黙を守って来た母の虹子が口を開く。「清、お前と健三は血が繋がってないんだ」清は徳衛が戦争で出征中別の男との間に作った子供だった。衝撃を受ける徳衛。

ショックで家を飛び出す健三と清。外では美津子と秀子が待っている。虹子は夫を子供のように優しく寝かしつける。河を見ながら徹夜した健三と美津子。健三は少し大人になった。でも美津子には追い付けないだろう。女は強くて逞しい。若い二人の前途を祝して物語は終わる。

まだ若き日(といっても40過ぎてるがw)の渥美清のダメ男ぶりが素晴らしい。無学で好色で口だけ達者で無責任。何も無いがフットワークとキップの良さにコロッと騙されてしまう女もいる。それがコールガールの沖山秀子。設定がそのままロマンポルノな所が実に( ・∀・)イイ!!

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