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吉村廉「結婚作戦」

2022年3月ザムザ阿佐ヶ谷で、吉村廉「結婚作戦」 脚本は若井基成。

明るくて優しくて人気者のお手伝いさん(笹森礼子)がお嬢さま(松尾嘉代)にセレブ婚活パーティの代理出席を頼まれた会場で青年実業家(藤村有弘)に見初められてしまい、彼は家まで押しかけるとのこと。周囲は破談作戦に一致団結し、嘉代も礼子もこれを機に純愛を掴み取り、事情を知った旦那様夫婦とも大団円、観やすく楽しいホームドラマ。

今なら、テレビドラマでもなかなか通らないような企画だと思う。だって、お手伝いさんが器量が良いだけじゃなくて性格も頭もパーフェクトに良くて、周囲の人たちも彼女のことが大好きで、でも金にモノを言わせて青年実業家が奪いに来てみんなで追い返す。お手伝いさんにも、青年実業家とのすったもんだになった元凶のwお嬢様にも本命の彼氏がいて結ばれてめでたしめでたし、まあ犬も食わぬようなお話(笑)

でもね(←でもね、じゃねーよw)故あって平日の午後に本来は演劇小屋であるザムザ阿佐ヶ谷で桟敷席に座ってこういう昔ながらの良質なホームドラマを見ていると、ホントに心が和んで安らぐんですよね。昔は映画ってもっと生活と身近にあったと思うんですよ。疲れをいやすような作用を求めたって不思議じゃない。

むしろ、現代の方が不健全なのかもしれない。心が安らぐ瞬間が無い、いつものべつまくなしスマホを弄っていて、映像として観るのもショッキングだったり奇を衒うもの、あるいはドキュメンタリーと称して深く物事を考えさせるのはいいけど、映画館に来てお勉強してる訳じゃないんだしさあ。

という意味で、本作を観て、ホントに心地よく、別に眠くなることなど一切なく、心をひたすらに癒されたのです。こういう作品観た後って「俺、これからはもう、こういう作品しか観ないぞ」とまで思うんだけど、結局はポルノとかバイオレンスとかコメディとか、メリハリがありすぎるほどある作品に行っちゃうんだよなあ。

本作は、想像以上に笹森礼子をガッチガチのアイドルに撮っていて、宇宙は全て彼女を中心に回ってます。野良犬が可哀想だと拾って来て、ステーキ食べてるお嬢様と違いおにぎりしかないのに、それをくれてやる。鬼婆としか思えない、都合の良い時だけ我が娘とのたまう奉公先のババアに反対されても、押し売りを撃退した功績を作りだして飼い犬にした。

その押し売りって言うのが由利徹で、本作の第一の刺客、いや、飛び道具(笑)ゴム紐を持ち出して「俺は刑務所から出て来たばかりなんだ」全然、怖くなくてむしろ可笑しいwこれでゴム紐買う方も買う方だろw礼子は外れていたボタンを縫い付け、おまけに自腹で100円渡して由利徹、もう大感激で正業に就いちゃう!

ワガママお調子者お嬢様の松尾嘉代が「ねえ、私、ボーイフレンドとデートなの。セレブ婚活パーティ代わって!」(←礼子にも好きな人、いるんだぜw)無茶ぶりに応え、会場に行って見れば繊細さの欠片もないような青年実業家の藤村有弘に一目惚れされ、逃げても逃げても、ついに家まで押しかけてしまう。でも、奉公先の家、会社が傾きかけていて大ピンチなの!藤村さんは救世主だったの!

なんとか嘉代と藤村の縁談をまとめようと両親はやっきになるが、嘉代じゃなくて礼子なのだ、藤村が惚れたのは(笑)そこで、両親以外の姉弟、近所のお手伝いさん仲間総出で藤村を撃退し、両親激オコでお手伝いさんを辞める礼子。でも、酒場の御用聞きで恋仲だった沢村忠雄は「俺、酒屋の跡継ぎなんだ」

これでハッピーエンド、という訳じゃない「ウソついてたのね」一旦は怒るが、まあ許すwその頃、藤村の登場で、奉公先の親会社が揺れに揺れて取引継続で会社倒産の難を逃れ、更にいつぞやの由利徹は400万円もの大金を礼子にポンとプレゼント。礼子は信じられないほど気前よく奉公先にその金を渡すが、さすがの強欲金持ちでもこれは受け取れないw

一躍、礼子は救世主としてその後もお手伝いさんを続けられることになった。でもさあ、こんな嫌味な金の亡者ばかりの家、早く出た方がいいよw嘉代がボーイフレンドと結ばれ、礼子も酒屋の大将のバイクにお嬢様座りして万事良かったね、と思うようで思えないモヤモヤが残るのも事実。

時代背景がそうとは言え、笹森礼子が演じるスーパーお手伝いさんが、女性であること、貧しいこと、は孤児だったこと、ありとあらゆる世の中の矛盾を背負っているような気がして、当時の世の中で激しい差別に遭ったのだろうなあ、昭和もダメな部分はたくさんあった、淡々といい話っぽく進む映画に違和感を覚えるのです。


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