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感染症と風邪の逆襲となぜ今(原文:Flu and colds are back with a vengeance — why now?)【脚色あり】

前文

 現在、風邪や感染症がコロナウイルスの終息と引き換えに広がりつつある。このような季節性のインフルエンザやRSV(RSウイルスによる呼吸器の感染症)などは、2020-2021年にはほとんど確認されていなかったものの、北半球のアメリカにおいて、今年のこの時期としては2010年来最多の入院率であるという。この状況に対して、多くの専門家が注意を促している。幼い幼児や高齢者だけでなく、過去に同じ感染症に罹患したことがある子供や大人でも、免疫の低下によるリスクがあるとその道のプロフェッショナルは考えている。

免疫負債(Immunity debt)

 誰もこの現象が起こりうるということを疑わなかったのか。決してそうではない。実際昨年にはいたのだ。2020-2021年はコロナウイルスのパンデミックも大方明け、コロナウイルスが猛威をふるっていた時と比べ、比較的制限のない社会を送れていた。そのため、季節性のインフルエンザやRSVのような感染症流行の懸念があった。しかしながら、その感染のピークは例年と比較しても穏やかであった。これには単純に昨年の気候が例年よりも湿潤的な気候であり、ウイルスにとって過ごしにくい環境であったと指摘する専門家もいる。
 一時期Twitterで免疫負債(Immunity debt)が話題に上がったのはご存じだろうか。免疫負債とはある1つの感染症に罹るのを避けるための努力が、結果的にほかの感染症も一時的に遠ざけることとなり、1,2年後に又押し寄せる現象のことである。今回の場合は、「コロナウイルスワクチンに免疫が、他の感染症に対する免疫までもを取り返しがつかないほど傷つけたのではないか」ということだが、それはナンセンスであると一部の専門家は一蹴している。
 とはいえ、感染症の動きを予測し、事前に適切な手を打つことは簡単な話ではない。もしかすれば、免疫負債の影響は1,2年で終わるかもしれない。それならば、マクロ的には一時的なものとして耐え続ければよい話かもしれない。しかし、そうでない、つまり本当に取り返しのつかないほど免疫が傷つけられ、今後長期的にも感染症が広がる可能性があるのならば、早急に対策を打つ必要がある。いずれにしてもどちらに転ぶかは、慎重な判断が必要だ。

ライノウイルスの謎(Rhinovirus mystery)

ライノウイルス(普段僕らが風邪と呼ぶ症状の30~50%の原因となるウイルス、徳春と秋に多く見られる)、本記事では季節性のインフルエンザやRSVといった感染症のウイルスについては、いまだ完全には理解できていないという。先述のように、これらの感染症の罹患者はコロナ流行の際は少なかった。このことはコロナウイルスのワクチンの影響によるものなのか、そうでないのか、これからも免疫負債を抱える状態が続くのかどうか、は重要な課題である。ある専門家は、必ず今年の冬でコロナウイルスも免疫負債も収束するというが、感染症ということを気にせず、街を闊歩することができる冬を、一面きれいな景色(人もイルミも街並みも)をうかがえる日が一日でも早く来ることを心から、願う。

〈引用〉
(Nature:Flu and colds are back with a vengeance — why now?:https://www.nature.com/articles/d41586-022-03666-9)
(トプ画:Pixels:https://www.pexels.com/photo/white-ceramic-sculpture-with-black-face-mask-3952240/ )


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