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【魅惑のハト・ルーム】開館50周年記念 HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館  千葉県立美術館

千葉県立美術館が開館50周年を迎えるという。
ポートタワーや千葉市美術館の設立前からある県立美術館。
夏になると県内の小学生の図工展などが大々的に開催されてきた。
私も昔、この美術館に図工作品が飾られたことがあるのは良い思い出だ。
公募展の展示会場によくなっていた記憶なので美術館よりアートセンター的なイメージだったが、ちゃんと所蔵品がある。

そして千葉県湾岸地区の企業といえば一昔前はAEONだったが、現在は泣く子も黙るファッション通販大手のzozoがある。少し前までアートコレクターでもある前社長のキャラクターが前面に出されていた。そんな企業と県立美術館のコラボである。

開催概要はこちら。

千葉県立美術館は1974年の開館から、本年で50周年を迎えます。これを記念し、本展では、千葉市内に本社を構える株式会社ZOZO(以下、ZOZO)と連携し、ZOZOと千葉県立美術館、ふたつのコレクションを展示します。それぞれのコレクションが出会ったことにより、近代以降に生まれた新しい表現が、各時代において「現代アート」として需要され、熱を帯びて次の時代の表現へと結びついていくさまを紹介します。

千葉県立美術館

これがすごく面白かったのだ。
県立美術館の所蔵品をちゃんと見たのが初だった、というのもあるのだが、名品が見れる。


残念な話題に上がっているクールベ。風景画でないコレクションは貴重。



で、今回1番惹かれた作品を。
こちらである。

なっ…!!!



なんだろうか、これ。鳩…か…

こっち…見てる…!


香炉、ということはお香を入れる器だ。

哀愁漂う後頭部には穴が。ここからお香が燻るのか。


卵から足がニョキッと生えたようなフォルム。


ポケモン的な感じもする

鳩だ。鶏っぽいけど…

今度は右から
真上から。やはり目が良い。



香取秀真氏の作品。
もうなんか絶妙過ぎて、(なにこれー!)と心の中で叫んでいた。
某チョコレート・ボールのキャラクターのみたいな形だ。

金工美術家だと佐倉市美術館へ行った際、津田信夫の名前は知ったが、同時代の香取秀真氏は知らなかった。ちょと調べると金工美術の苦労は多かった時代。そして千葉に縁があった人。香取秀真氏の息子・香取正彦は人間国宝だった。

しばらくこの鳩香炉の前から動けず360度見れるのをいいことにぐるぐる眺めていた。
その間、やはり多くの人が「なにこれw」と笑顔で通り過ぎてゆく。
人を笑顔にできる鳩って良いじゃないか。
なんか嬉しくなってしまう。

実を言うと私は鳩という鳥がかなり好きだ。
あいつら地面にいる時間が長いし警戒心が無いせいで近くで観察がしやすい。職場近くに鳩の溜まり場があり、出社前に観察して写真を撮りInstagramのストーリーズに上げるのが私のモーニングルーティンである。

しまった、話が逸れた。

しっかり観察して満足したので私もその場を去って他の作品を見に移動。

(あれは東山魁夷か…?)とフラフラと吸い寄せられた、緑色の画面の雪景色。撮影は禁止。長野に続き、千葉にも良い作品がある。
かなり大きな作品だ。しかしガラスケースの反射が激しくちょっと見にくかったのが残念。一昔前の建物の日本美術展示ケースの見にくさって、今の技術でどうにかならないだろうか。ガラスの種類とか。

そんなことを考えて、ガラスにへばりついていたら後方から
「なんだこれ!!むっちゃかわいくね?」という歓声が聞こえてきた。
振り返ると、あの鳩香炉の前でわーってなってる20代ぐらいの男性2人組がいた。
「なんだこれ〜?!すげ~いい!」と言いながら写真か動画かを撮影していた。不思議な形をしたレンズを外付けしたカメラ?スマホ?を向けていたのでYouTuberかTikTokerか…SNSコンテンツを作ってる人だろうか。

わかる…いいよねその鳩香炉…わーってなるよね。
その気持ち、共感できる。

もし、今後この鳩香炉がバズることがあったら…あの2人組のおかげ、だったりして。なんて思った。

「重要文化財の秘密」展で見た宮川香山の蟹貼り付けのあの器みたいに、工芸品にはたまに「何これ!?」という出会いがある。
たまらなく楽しい。
これからもこういう出会いに期待したい。


zozo側のコレクション品で面白かったものはこちら。

クワクボリョウタさんは良く千葉で作品を見る。
ステラオマージュ


チバンク・ステラかーいと突っ込んだら次の日フランク・ステラの訃報が届いた…
先日ワタリウム美術館でドナルド・ジャッドの作品を見てステラのこと思い出して長生きして欲しいと書いたばかりだったのに。
悲しいけれど、これからも作品は生き続けると思いたい。

世田谷文学館の個展以来にデカい作品見た、江口寿史氏作品


ホワイトの跡が残っててなんか良いなと思った。


さて千葉県立美術館は築年数もそこそこになるが、味わいあるセンスの建築である。
建築は大高正人。館内の調度品などにもこだわり手掛けたとのこと。
本館から少し枝分かれした廊下の先にある資料室前のスペースで休憩するのがお気に入りだ。

なんともいえない時代感。


昔のドライブイン感



5月、青空の千葉。港付近。午後。
自分的ベストな時間だった。
気分は上々である。



※展覧会は5/19までと終了間近。
お近くで可能な方は、ぜひ鳩香炉を見に行って頂きたい。

平屋建て。背後のタワーがポートタワー。
野口里佳氏の写真にも出てくる。

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