迫真の留学日記61「差別なんて」

 日付:2024年1月9日(火)
 位置:アメリカ カリフォルニア州(時差-17時間)
 身分:留学生
 天気:晴れ


 登場人物
・緑茶ドラゴン:書いている主、21歳日本人男性
・ダニエル:スイス人、17歳、ルームメイト
・ラファエル:フランス人、18歳、準ルームメイト


 2段ベッドは上がいいのか下がいいのか、これは非常に難しい話である。前の家にいるときにも、2段ベッドについて話したことがあったとも思うが、その時は上に誰かが寝ているわけではなかったため、体を起こすと頭が当たることくらいしか問題にはしていなかった。

 しかし、今の家では上でダニエルが寝ているため、他の問題点も見えてくるようになった。

 それは揺れである。物理的な話になってしまうが、ベッドにおける支点はベッドと床の接触部分であるため、当然のことながら上のベッドの方が、支点から離れているためモーメントが大きくなる。つまるところ、上のベッドは揺れやすいということである。

 今は下で寝ているから大丈夫かと思うかもしれないが、上と下は一体化しているため、上の揺れはしっかりと下に伝わる。今朝はベッドの揺れで起こされた。

 ダニエルは午前から授業があったようで、まだ私は起きる時間ではなかったため、二度寝をすることにした。睡眠時間は少し減ってしまっているが、罪悪感もなく二度寝ができたため、得した気分になった。これは2段ベッドを擁護するつもりで言っているわけではないことに留意してほしい。

 二度寝を終えた私は、ラファエルと一緒に学校に行くことにした。

 途中の道で、フランスの人種差別の話になった。やはり、ヨーロッパの人間はどうもプライドが高い人間がい多いみたいで、黒人やアジア人の差別をする人は結構いるとのことを言っていた。

 フランスの街を歩いていると、差別用語を言ってきたり、目じりを指で引っ張り目が細いことを馬鹿にしてくるらしい。

 私からすれば、大きくて青い目は直射日光からのダメージを受けやすいので、そちらの方がよっぽど劣等種族のように感じてしまう。

 ラファエルの友達にも、そうやって差別的な発言をする奴がいるらしいが、ラファエル自身は差別は良くないことだと思っている、と弁明していた。

 私からしてみれば、差別なんてみんな心のどこかでしているため、相手に伝わらなければいいと思っている。

 差別なんてしても、しがらみが起きるだけで、何のメリットもないのに、その行動をとってしまうほど、愚かな人間は生きていくうえで、その頭の悪さのせいで苦労してきたであろうから、私は差別をしてくる人間を見ると、かわいそうで仕方ないのだ。自分には誇れるものが何もないことを知り、自分が属している集団の過去の栄光にすがり続けているのだ。

 私のことを中国人だと間違える人間がいても、全く気にならない。しかし、相手が間違いに気が付くと、sorryと誤ってくる場合は困る。そのsorryは果たして、単純に間違えたことに対してなのか、それとも中国人と間違えたことに対してなのか分からないからである。

 兎にも角にも、私は日本という、年収でしか差別されない世界で生きてきたので、人種差別というのがとても稚拙なものに思えてしまうのだ。だから私はラファエルに
「I’m a racist for racist(私は差別する人を差別する)」
と言ったところ、ラファエルは満足そうな顔をしてハイタッチを求めてきた。私とラファエルのハイタッチの音は、朝の空気にひろがっていった。


 帰宅してから、私はダニエルに、3月の中旬に大きなラップのフェスティバルがあるから一緒に行かないか、と誘われた。

 17歳のドイツ人と、3泊4日で旅行をすることがどれだけ大変か私は知っているため、簡単には快諾できない。

 そして予算は9万円弱だという追加情報を聞いて、更に悩むことになった。ダニエルは気にしてない様子であったが、それは彼が17歳でバイトを70時間することの大変さを知らないからであろう。

 確かに知っているアーティストもたくさん出ているため、とても興味深いフェスティバルではあるが、いろいろなことを考慮した結果、後で決めることにした。

 一番良くない回答かもしれない。しかし、今も深刻な金欠で、いろいろと依存してきたものを捨てている身としては、やはり即決はできない。

 最近は、禁断症状の強さは、性欲が一番つらいかと思いきや、以外にも砂糖なのではないかという疑惑を持ち始めるくらいだ。のどが渇いたから、キッチンに行って水を飲もうにも、ホストマザーがキッチンの入り口の前においてあるソファーで寝ているため、洗面台の蛇口の水を飲むしかない。全くおいしくない、口当たりが悪すぎる。

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