迫真の留学日記74「明けない夜」

 日付:2024年1月22日(月)
 位置:アメリカ カリフォルニア州(時差-17時間)
 身分:留学生
 天気:雨


 登場人物
・緑茶ドラゴン:書いている主、21歳日本人男性


 明けない夜はない、そして沈まぬ太陽もない。よく小説やドラマで前半部分だけを切り取った発言を耳にするが、虫が良すぎると思う。

 現状がどん底な人間にかけてあげる言葉なのかもしれないが、私はそういった人間に対して、無責任に良いことがあるよなんて言えない。むしろ今の君を繋ぎとめているものを大切にしてほしいと言いたい。

 それにしてもこの言葉は面白いもので、この宇宙には無数の星があって、その中にはずっと夜だったり、ずっと昼だったりする星が存在する。そう考えるとこの言葉の普遍性はほんの少し低いように感じてしまう。

 とは言ったもののこの言葉の語源は日本語ではないため、揚げ足を取ったところで仕方がない。

 the night is long that never finds the day.(明けない夜は長いものだ)このシェイクスピアの言葉が翻訳されて、明けない夜はないという風になった。やはり訳を通過する過程で、普遍性が落ちてしまっている気がする。

 結局のところ前後関係があるため、一概にこの翻訳が良くないとは言えないが、少なくとも原作以外で「明けない夜はない」と出てきたときには、楽観的だなと感じてしまうのが私であります。

 さてさて、また最近睡眠時間が足りなくても目が覚めてしまうという現象に陥っていて、恐らく鬱の逆、躁が来ているように感じる。

 鬱はdepressionで躁はmaniaである。マニアというのは聞きなじみのある単語で、熱狂的なほど好きなものを愛している人というイメージだ。

 今日も夜に家に帰ると、ホストマザーから夜ご飯は今日はもう終わったよ、という悲しいお知らせを受けた。しかし、おいしくない料理を食べて、おいしいと言いながら、大したことない料理を本音と一緒にかみしめる必要がなくなったとも考えられる。

 そして、軽い足取りで片道20分のマックまで行き、オーダーを済ませて、客が自分一人だけの状況の店内で本を開いた。『ナミヤ商店の奇跡』、ちょうど家から持ってきた小説だ。

 冒頭の部分を読んでみたのだが、話の内容としては、3人の男が何らかの犯罪行為をしてある商店に逃げ込んだ。しかしその商店には怪力乱神な力が働いており、過去の人からの悩みの手紙が届く。その手紙に返信を書いたところ、また過去の人から返信が来るという不思議な商店の話だということが今読んでいるところから判明している情報である。

 ここからはあくまで私の予想なのだが、恐らくその3人が今度は自分たちが相談をしてみる立場にまわると思う。そして、その男たちが犯した罪が明らかになっていき、それまで書いていた返信の相手も何かその犯罪に関係しているのだろう、そして最終的には3人は更生して、同時に3人の悩みも解決されて終わりみたいな物語だと予想する。というか自分ならそういう展開にする。

 この予想があっているかは、本を読み進めてみないと分からない。私は売れている小説を教科書だと思って読んでいるため、筆者が何を思い文章を書いているのかと想像しながら読む。

 教科書というと退屈なイメージがあるから、教本とでもいった方がいいのだろうか、いや参考書と言った方が自主性があっていいか。

 最近になって、自分の小説の楽しみ方が確立されてきたような気がする。

 今日も夜が明ける前に寝ようと思う。


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