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競馬ファンの季節感

 春夏秋冬というのは、人それぞれの感覚があります。
 ぼくは競馬ファンなので、レースによって季節を感じます。そのレースが特別に好きというわけではないし、そのレースで当たった記憶があるというわけでもありません。でも、季節を感じさせてくれるレースというものがあります。
 
 毎年、弥生賞がすぎると春が来るなぁと思います。ぼくにとっては、季節の区切りの目安となるものでした。
  
 弥生賞は、毎年3月の初めに行われます。競馬のレースにはグレードがあって、弥生賞は上から2番目の「グレードⅡ」。賞金額も、億を超えるまではいきません。
 それでも競馬ファンにとっては、年のうちのとても重要なレースとして位置づけられていました。
 ぼくもまた、そのレースで季節を感じるくらい、自分の中で重要度合いの高いものでした。それは、その後に行われる4月の皐月賞、5月のダービーに向かう、前哨戦だったからです。
 
 ダービーは、ほとんどの人がレース名を知っているでしょう。皐月賞も、かなりの人が知っていることと思います。その2つは最高峰のグレードⅠで、賞金額も億を超えます。弥生賞は、その最高峰のレースを占う、ステップレースです。時期も近く、弥生賞の成績が初夏の大レースに直結するのです。弥生賞を勝った馬は、その後のグレードⅠのレースを制する確率の最も高い馬となるのでした。
 実際、弥生賞勝利馬からは、名馬が続々生まれています。のちの3冠馬ディープインパクトも、シンボリルドルフも、ミスターシービーもここを勝っています。
 
  
 ぼくの競馬小説『アイドルジョッキー弥生は1番人気!!でGⅠレースを勝てるのか⁉』は、だから、このレースを出だしにしました。このレースの走りで、その後の競走馬人生が決まるといってもいいくらいだからです。
 野球で言えば、甲子園。そこで、どれくらい活躍できるかでプロでの扱いが違うという感じです。
 
 しかし、このところ、それが変わってきました。
 弥生賞の勝利馬、上位入線馬が、その後の皐月賞やダービー、秋の菊花賞というクラシック3冠で振るわないのです。
 ここ10年をとると、弥生賞優勝馬はマカヒキ(ダービー)とタイトルホルダー(菊花賞)だけ。弥生賞2着馬まで広げると、その後ダービーを獲ったのが2頭。弥生賞3着馬にはクラシック制覇馬はなし。
 たった4頭だけです。
 
 それからさらに10年遡っても、弥生賞優勝馬には、ディープインパクトはいるものの、それ以外にはダービー馬1頭と皐月賞馬1頭。弥生賞2,3着馬にクラシック制覇馬はナシです。
 どうも、2000年代に入ってから、弥生賞がスター候補生の舞台ではなくなってしまいました。
 
 さらに10年遡って、2002~1993年は、弥生賞1着、2着、3着馬に、のちのクラシック馬が12頭います。1992~1983年は弥生賞1着、2着、3着馬に、のちのクラシック馬が6頭ですが、3冠馬2頭、2冠馬1頭が含まれています。
 
 「最もグレードⅠに近いグレードⅡのレース」と言われていた弥生賞も、最近では眼だった活躍馬が出ていません。なのでちょっと、季節感にも狂いが生じています。
 
 これまでは、「弥生賞が終わったから暖かいんだ」と思うところ、「このところ暖かいけど、弥生賞終わってたんだな」という感じです。
 
 今年もまた、弥生賞上位は名馬となる感じを受けないものでした。でも、そんなぼくのつまらない考えを吹き飛ばして、クラシック制覇をしてほしいなと思います。



 

 
 




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