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歌の内容を理解しないとまずいっす

あるテレビでの報道番組でした。
僕はある有名アスリートが結婚したということで、この結婚披露の様子が紹介されている場面を見ました。
聞き覚えのある曲がかかり、新郎新婦が入場、会場の人々に拍手で迎えられます。
幸せそうな笑顔が画面に映し出されます。
ん?んん? 
僕はテレビの画面を見ながら自分の耳を疑いました。
披露宴会場に流れている曲が James Blunt という歌手が歌う You're Beautiful
という曲だったからです。

僕は気に入った曲があるとその歌詞を英文で読みます。
どんな歌なのか、その曲の主人公は何を感じたのか、何を言おうとしているのかを理解しながら聞くようにしています。
当然、この曲もどんな曲なのかは知っていました。

この曲のサビの部分です。

You're beautiful, you're beautiful
You're beautiful, it's true
I saw your face, in a crowded place
And I don't know what to do
'Cause I'll never be with you

このサビの前段階では、主人公が地下鉄の人混みの中で見かけた女性がとても綺麗で美しくて、すっかり目を奪われてしまいます。
でもその女性は男性と一緒、つまり恋人同士のようです。
今目の前にいるその女性とは、これっきり二度と会うことはないのだろうという主人公の切ない気持ちが歌われ、そこからこのサビが始まります。

君は美しい 本当だよ
君の顔を人混みの中で見たんだ
でもどうしていいかわからない
だって決して僕は君と寄り添うことはないから

'Cause I'll never be with you
この一文から、will never という言葉が使われているので、今もこれから先の未来も共に生きていくことはないということが表現されています。

これを結婚式の披露宴でBGMに使っていたわけですから、本当にびっくりしました。
余談ですが、ある著名なプロのバイオリニストの人が言ってました。
よく披露宴で演奏して欲しいという依頼を受けるそうです。
で、希望の曲名を聞くと セリーヌディオン の to love you more という曲を希望されることがけっこう多いそうで、頼まれたから演奏はするけど、この曲の意味知ってるのかなぁと笑ってました。
この曲、一度はお付き合いしていたけれども別れてしまった彼を今も思っている女性が、彼の胸に戻れるように、もっと彼を愛する一人でいさせてくださいという内容です。

他にもおかしな曲選びはいくつかあります。
多く目にしたのは TVCM で、住宅を売り込むコマーシャルです。
綺麗で工夫され、とても贅沢で素敵な家と、そこに住む洗練された家族が映し出されていました。
こんな素敵な家で、大切な家族と素敵な時を過ごしてくださいという、大人向けの上品なTVCMでした。
この映像のバックにかかっていた曲こそ、 Biilly Joel が歌う Piano Man でした。
僕はその CM を見かけるたびに、全然脈略がないじゃん・・・と、半分バカにしたような気分でいました。

この曲は、週末のナイトクラブか何かでピアノを弾くピアノマンが、演奏しながら目の前で繰り広げられる酒飲み達の人生の一端を語るような曲なのです。
曲調としては住宅のCMに合うような気はするのですが、歌詞を読み解いていくと、とても素敵な家で家族を大切にしてください的な映像に相応しいとは思えないのです。

Now Paul is a real estate novelist
Who never had time for a wife
And he's talkin' with Davy, who's still in the navy
And probably will be for life

例えばこの部分、ポールという男はクラブの中で酒に酔って
今も海軍に身を置くデイビーという人と話をしている様子が歌われています。
このポールは never had time for a wife ということなので、意識的に結婚をしないと決めていたのか、結婚したかったけどできなかったのはわかりませんが、今は独身で、今後もそれは変わらないだろうとピアノマンが語っています。
ポール以外にも酔った客の姿がドラマチックに語られている素敵な曲で僕はカラオケに行くとこの曲をよく歌います。
さて、僕が住宅のTVCMを制作する仕事をしていたら、この曲が本当に良い曲だとは思いますが、採用はしませんね。
素敵な家族と過ごす大切な家を売ろうとする時に、この歌詞をお客様に聞かせようとは思えないですから。

こんなふうに、これだけではないと思いますが、日本のあちこちで雰囲気だけで曲選びをする傾向があります。
もちろん、それがいけない事だというわけではないので咎めるとか批判しようという気はさらさらありません。
ただ、こういう事実を後で知った時には、きっとまずかったなと思うのではないかと思うのです。
なので、どんなシーンでも、曲選びは曲の内容を理解してから選びましょうね、と言うお話です。


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