第40話 んあ~!!これダメだぁ~!!

 ボクはお話しを思いついた瞬間が一番好きだ。
「あ~、なんか面白いの思いついちゃった!!」
 そうやってニヤニヤするのがたまらなく好きだ。

 1話完結型の話を思いついた。
 お話しを書いてみようと、ノートにいろいろ書き出してみる。
「登場人物は何人必要かな~?えーっと、1,2、3…全部で5人は必要かな~?」
 その後はその登場人物の名前を考える。
 1話完結型だ。それほど名前も真剣につけるつもりはない。
 なんでもいいわけだ。
 それなのにちょっと真剣に考えている自分がいる。
「ボビー、ボビー…う~ん、ボビーはねぇなぁ、さすがに」
 そう言いながら、結局ボビーとほとんど差がない名前をつける。

 名前を決めたら同情人物の役割をより具体的に。
 もちろんふわふわな世界観も固めていく。
 でも、集中力がないボクはしびれを切らしているのだ。
「あ~、めんどくさい。めんどくさい。早く書き始めたい!!」
 そんなことを思いながらノートにぐちゃぐちゃ書いていく。
 今まで少なからずお話しを書いてきて、事前準備がいかに大切なのか分かっているのに…
 経験をしているのに学ばない典型的な例だ。
 非常に嘆かわしい。

 そしてもう我慢できず、張りぼてのような状態でスタートしてしまう。
「よし、書こう!!」
 正直、いつもこんな感じだ。

 意気揚々とキーボードに打ち込むが、
「ん~?あれ?ちょっと待てよ」
 案の定止まる。
 でもこれはこの題名にある通り、いつも通りのことだ。
 平常運転である。
 しかめっ面しながらボクは書き上げていくのだ。
 全然問題ない。

 しかし、稀にそれを飛び越えるときがある。
 何度でも止まる。
 何度でも消す。
 何度でも書き直す。


「………ふぅ」
 そして悟る。
「んあ~!!これダメだぁ~!!何度やり直してもダメだぁ~!!お蔵入りだぁ~!!」
 どうやっても面白くならない。
 この瞬間はいつもげんなりする。

 まぁ正直なところ、途中から気が付いてきているんだよね。
「あれ?これってあんまり面白くならないんじゃね?」
 って。
 そう、気が付いているのだ。
 でも、せっかく浮かんだアイデアなんだからって。貧乏性かな?
 無理やり形にしようとする。

 でも結局、
「あ~、ダメだぁ~!!」
 ってギブアップする。

 ここはきっぱりと諦めて次に行かないと。
 でもその前に…創造主としてやっておかなければならないことがある。
 それはキャラクターたちへお蔵入りを告げることだ。

 ここは一話完結のお話しの世界。
 しかし、まだ完成していない。
 簡単なリハーサルを終えたキャラクターたちは本番を待っているのだ。

「ん?なんかさっきから創っては壊しの繰り返しだったけど…止まったな。でもまだ全然お話し出来上がってないぞ」
「あれだろ?いつもの息抜きじゃねぇの?長い長い息抜き」
「う~ん、まぁそういうことなら仕方な…ん?」
 そこへ近づいてくる足音。
 そしてキャラクターの前に登場する。
「や、やぁ」
「あ、しょうが焼きじゃん!?どうしたんだよ、こんなところまで来て」
「皆さんおそろいで…お疲れ様です」
「まだ何もしてねぇから別に疲れてねぇけど」
「あはは…そうですね。あの…えーっとですねぇ、あのぅですねぇ…」
「ん?なんだよ?どうしたんだよ?」
「…皆さん!!今回のお話し、お蔵入りになりました!!」
「なぁんだとーー!?」
「ごめんなさい…ごめん。ボクの力不足です…あ、でも絶対に次に生かすから。うん、ごめん!!」
「おい、しょうが焼き!!ちょっ…待…」
 ボクは一方的に告げて、保留というフォルダーを作って、そこにお蔵入りとなったお話しをダンクシュートする。

「保留」
 ボクはフォルダー名を「ボツ」という名前にはしない。
 いつか日の目を見ることを夢見ているのだ。
 だからボクは「保留」という名前に「する。

 しかし…知っている。
 キャラクターたちは知っている。
「保留」の前にある言葉がつくることを…
「ずっと保留」
 恐ろしや、恐ろしや。


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