新人天使おむすびちゃん:クリスマス
今日も一人の天使が下界に舞い降りていきます。
そうです、新人天使おむすびちゃんです。
しかし今日下界に向かうのはおむすびちゃんだけではありません。
他のたくさんの天使と神様が次々と下界へ降りていきます。
なぜなのでしょう?
それは今日が特別な日だからです。
今日は12月24日。クリスマスイブの日です。
神様たちもクリスマスを楽しむために下界に降りたのでしょうか?
いいえ、違います。
ではなぜこの日に下界に降りるのでしょうか?
それはこのクリスマスというイベントの日が下界で最も優しさと温かさに包まれる瞬間だからです。
天使と神様たちはこの優しさと温かさを味わいに来たのです。
クリスマスイブの日の夜は世界中の大人たちが子供たちのために行動を起こす日のです。
サンタクロースを信じる子供たちのために。
プレゼントを渡してお終い?そんな野暮なことはしません!!
子供たちの夢を壊さぬように。そしてこれからも子供たちに夢を持ってもらえるように。
大人たちはサンタクロースを演出するのです。
そんな優しさに溢れた行動が神様たちには大好物なのです。
大好物が目の前にぶら下がっているのに天界でじっとしている神様たちじゃありません。
みんなそれを味わいに一斉に下界に降りてくるのです。
もちろんそれを味わうために神様たちも少なからずお膳立てはします。
大人たちの手助けをするのです。
サンタクロースが現れるとされるクリスマスイブの夜。子供たちは簡単に寝ようとしません。
サンタクロースの姿を一目見ようと寝ずに起きていようとする子がたくさんいるのです。
そんな子供たちには天使たちがハープを弾きます。
すると、どんな子供もたちまちうとうとし始め、いつの間にか眠ってしまうのです。
これによって起きている子供は1人もいないのです。
もちろんハープを弾く天使の中におむすびちゃんも含まれます。
ただおむすびちゃんはハープを弾いている内に自分も眠くなってしまって、よく子供たちのベッドに入り込んで一緒に眠ってしまいます。
でも大丈夫。そんなときは先輩天使にちゃんと叩き起こされます。
次は大人です。
大人はプレゼントを枕元に置くために物音を立てないように動こうとします。
そんな時は音の神様が音を小さくする魔法をかけてあげます。
そして忍者の神様も抜き足差し足忍び足を使えるように魔法をかけてあげます。
これで子供たちに気づかれることはありません。
しかし、何もすることがないおむすびちゃんが暇を持て余して、深夜アニメを見ようとテレビを点けようとします。
でも大丈夫。テレビを点ける前に忍者の神様がおむすびちゃんを絞め落とします。
神様たちがするのは手助けだけではありません。
彼らは意外にロマンチストでムードも大事にするのです。
そんな時はお天気の神様の登場です。
お天気の神様の粋な計らいでホワイトクリスマスにしようと雪を降らせるのです。
雪を降らせる装置を使ってしんしんと雪を降らせます。
しかし、この時もおむすびちゃんは暇を持て余して、雪を降らせる装置に触わろうとします。
この雪を降らせる装置はとてもデリケートな装置でちょっと操作を誤ると簡単に猛吹雪になってしまうのです。
おむすびちゃんが装置を触って、そんなことになってしまったら一大事です!!
でも大丈夫。みんなでおむすびちゃんを拘束して縄で縛りあげます。でもそれは少しの間だけ。
なぜなら、しばらくすると雪が積もるのでおむすびちゃんはその雪で遊びだすので雪が積もり出したら拘束を解いてあげます。
しかし、こんな日にも悪いことをしようとする人間はいます。
サンタクロースに扮した泥棒がいます。
こんな時こそおむすびちゃんの出番です!!
おむすびちゃんは普段から下界に降りているので、悪い奴を簡単に見抜くことができます。
おむすびちゃんは悪い奴を見逃しません!!
「ほら、あそこ!!おじいちゃん、あいつ泥棒だよ!!」
おじいちゃん。おむすびちゃんがそう呼ぶ相手は全知全能の神、ゼウスです。
ゼウスのことをおじいちゃん呼ばわりするのは全ての天使、神を含めてこのおむすびちゃんだけです。
おむすびちゃんはゼウスのことが偉大であることは知っています。
それでもおむすびちゃんはゼウスのことを気にせず「おじいちゃん」と呼んでいました。
ゼウスもそう呼ばれることを全然気にしていないのですが、周りはいつもヒヤヒヤでした。
そんなゼウスも悪い奴には黙っていません。
ゼウスは泥棒に向かって神判を下します。
泥棒は急に視界が真っ白になり、辺りを見渡します。そして泥棒だけに聞こえる大きな雷鳴が響き、雷が泥棒に落とされます。
そうです、これが「裁きの雷」です。
この裁きの雷はありとあらゆるものを破壊することができる恐ろしい雷ですが、ゼウスが泥棒を殺すことはありません。
びっくりさせて気絶させたり、あるいは人間の警察に捕まるように仕向けたりするのです。
本当はもうちょっときついお仕置きしようとしたのですが、おむすびちゃんにそこまでする必要はないと注意されたのでした。
こうした神様たちのちょっとしたお膳立てにより、今年も無事にクリスマスイブの夜を終えることができました。
―12月25日の朝—
目を覚ました子供たちはプレゼントを見つめてベッドから飛び起きます。
そしてそのプレゼントを抱えて両親の元へ走っていきます。
「おとうさぁーん!!おかあさぁーん!!サンタさんからプレゼント届いた!!」
「ほんとか!?良かったなぁー!!」
子供たちは両親に満面の笑みを向けます。
とても幸せそうな表情です。
そんな子供たちの喜んでいる表情を見て、大人たちは満たされた想いになり、そして子供たちのように幸せそうな表情をするのでした。
幸せそうな人間たち。
優しさと温かさに包まれた人間たちの世界。
神様たちも人間たちと同じように満たされた想いでいっぱいになるのでした。
もちろんおむすびちゃんも。
「大成功~!!」
おむすびちゃんはいつものようにVサインをするのでした。
そうして神様たちは天界へ帰って行きます。
もちろんおむすびちゃんは今年も邪魔ばかりしたのでこれから帰って説教会が始まるのは言うまでもありません。
めでたしめでたし。
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