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[要旨]

アメーバ経営におけるアメーバとは、独立したプロフィットセンターですが、それを運営するために、独立採算制の管理会計が採り入れられます。しかし、その管理会計に基づく管理はアメーバ経営を実践するための手段であり、最終的な目的は、各アメーバが全体最適の考え方で活動することです。


[本文]

前回、稲盛和夫さんのご著書、「アメーバ経営:ひとりひとりの社員が主役」に基づいて、アメーバ経営の概要を述べました。今回は、アメーバ経営に関し、肝となる部分について述べたいと思います。「(多くの製造業では、標準原価計算を採用し)『前期はこういう原価になっているので、今期は前期の1割減を目標にして原価を下げよ』というような指示が(経営者から)出る。それを受けた製造部門は、前期に比べて1割下げた目標となる原価を設定し、その範囲内で製品をつくるように努力するが、目標とする原価内で製品をつくれば、自らの責任を果たしたことになるので、自ら利益を生み出すといった意識はまったくない」

「さらに、製品の原価にマージンを乗せて売値を決めて、販売するのは、すべて営業部門の才覚であり、責任だが、なかには、『市場競争が激しいので、原価に少し利益を乗せたぐらいで売るしかない』といって、会社全体の利益を考えずに、安易に値決めをするものが出てくる。そうすると営業経費を差し引くだけで、たちまち赤字になってしまう」

「一方、アメーバ経営では、製品の市場価格がベースとなり、社内売買により市場価格が各アメーバに直接伝えられ、その社内売買価格をもとに生産活動がおこなわれている。さらに、製造のアメーバが独立したプロフィットセンターであるため、製品の売値で利益が出せるよう、アメーバが責任を持ってコストを引き下げようとする。つまり、与えられた標準原価で製品をつくることではなく、市場価格のもとに、自ら創意工夫をしてコストを引き下げ、自分の利益を少しでも多く生み出すことが、製造部門のアメーバの使命なのである。

したがって、社員の大部分を占める製造部門が、自分のつくった製品の原価しか知らない一般の会社と、アメーバ経営を採用している会社では、従業員の採算意識に雲泥の差が生じる。アメーバ経営の製造部門では、標準原価方式のように原価のみを追求するのではなく、メーカー本来の姿である、自らの創意工夫により、製品の付加価値を生み出すことに主眼が置かれている」

特に、この、「原価のみを追求するのではなく、付加価値を生み出すことに主眼が置かれている」という考え方は、従来の管理会計の考え方とは、180度方向が異なる考え方だと思います。ただ、付加価値を生み出そうとする考え方は、単に、数字を示し、管理するだけでよいということではないと思います。

詳細は割愛しますが、従業員の方に全体最適の考え方を身に着けてもらうことが前提になるでしょう。それを実践するための体制が、「独立したプロフィットセンターであるアメーバ」なのだと思います。繰り返しになりますが、アメーバ経営の考え方では、管理会計は手段であり、最終的な目的は、社長ひとりではできない管理活動を、各アメーバのリーダーが、社長に代わって指揮をとり、全体最適に基づいた考え方でアメーバが活動をすることだと思います。

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