見出し画像

『あの人何をしてるんだっけ』症候群

[要旨]

リモートワークが進むことで、組織の一体感や、会社への貢献意欲が減少したという調査結果が出ていることからもわかる通り、人間は有機的な存在であることから、公式的な組織だけの関係では、円滑な組織活動が困難になります。そこで、従業員同士が、仕事とは関係がない場で、非公式組織がつくられるような対策を行うことが必要になっていると考えられます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、立教大学経営学部の中原淳教授の著書、「チームワーキング-ケースとデータで学ぶ『最強チーム』のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、変化の激しい時代においては、事業内容が次々と変わるため、どんな企業や業種でも、『自社は何の会社なのか?』が曖昧なものになり、『うちの会社って、何の会社だったっけ?』という状況に陥りがちなので、これを解消するためには、上司と部下が短いサイクルで面談を繰り返し行う、1on1ミーティングが有効ということについて説明しました。

これに続いて、中原教授は、「あの人、何の仕事をしてるんだっけ?」症候群について説明しています。「これは、あるメーカーに勤める方が、職場のコミュニケーションについて振り返って述べた言葉です。『気づいたら、一日、誰とも会話しなかったっていう日もあるんです。すべてのコミュニケーションは社内チャットで済みますし、言った言わないの水掛け論にならないよう、文字で残したいということもあります。なので、チームであって、チームじゃないんですよ。

あまりよく知らない人が、ただ、自分の隣にいる、ただ、それだけです…』(中略)実際、パーソル総合研究所が2020年に行なった調査によると、リモートワーク(テレワーク)実施前と実施後の、職場の状況に関する『変化』について、『上司とのやりとりが減った」が50%、『組織の一体感が低くなった』が36.4%、『組織へ貢献したい意欲・気持ちが減った』が25.6%、『組織への帰属意識が減った』が24.8%となっています。

リモートワークという新しい働き方を推進するのであれば、こうしたネガティブな影響を極力抑えるようなマネジメント手法を、管理職・リーダーが身につける必要が出てくると思われます。これらの理由によって、職場でのコミュニケーションが希薄になっていることに加えて、チームワークが成立しにくくなっている理由がもう1つあります。それは、“オフ・ザ・ジョブ”コミュニケーション、つまり、職場外でのコミュニケーション機会の減少です」(37ページ)

中原教授のいう“オフ・ザ・ジョブ”コミュニケーションは、具体的には「飲み会」なのですが、これは、よいか悪いかは別として、減少しつつあるようです。私もそれは仕方ないと思っています。しかし、「職場外でのコミュニケーション機会の減少」は避けた方がよいと思っています。なぜなら、有機的な人間で構成される組織は、職場だけでの関係、すなわち、公式組織の関係だけでは円滑に活動できないことは明らかだからです。公式組織の対になる組織は非公式組織ですが、非公式組織が存在するからこそ、円滑な組織運営ができるようになります。

では、どうすればよいのかというと、QCサークルなどの活動を導入することだと思います。QCサークルの活動を通して、非公式組織もできるからです。もちろん、この非公式組織をつくる方法はQCサークルだけに限りませんが、経営者の方は、公式組織だけでなく、非公式組織や、“オフ・ザ・ジョブ”コミュニケーションについても、何らかの対策を講じる必要があると、私は考えています。

2023/4/29 No.2327

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?