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記憶に残る幕の内弁当はない

[要旨]

幕の内弁当のような商品は、ある程度の需要の見込みがあり、多くの経営者は、そのような商品を販売しようとします。しかし、幕の内弁当は、印象に残らない商品でもあるので、顧客からのロイヤルティは高くなく、あまり利益が得られません。したがって、経営者の方は、安定性にとらわれず、印象に残る商品の開発に挑むことが望まれます。


[本文]

東京の上野駅と浅草駅の中間にある、かっぱ橋道具街の料理道具専門店、飯田屋の社長、飯田結太さんのご著書、「浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟」を拝読しました。「『記憶に残る幕の内弁当はない』おニャン子クラブやAKBのプロデューサーとして知られる秋元康さんの言葉です。人々の記憶に残り、選ばれる存在になるためには、とんかつ弁当や生姜焼き弁当、牛タン弁当のように、何か『これは!』という特徴が必要だという意味です。

飯田屋は、まさに、なんでもあるけれど、まったく人の記憶に残らず、選ばれもしない幕の内弁当のような店になっいたのでした」経営者の方の多くは、自社の商品や製品が「幕の内弁当」になってはいけないと考えていると思います。しかし、私の、中小企業をお手伝いしている経験から感じることは、業績があまりよくない会社ほど、経営者の方が無意識に、「幕の内弁当」を販売しようとしていると感じます。

その最大の理由は、「幕の内弁当」であれば、印象には残らないものの、そこそこ売れるからです。売れる見込みがあれば、経営者の方も安心できます。でも、印象に残らない商品なので、競争力も高くないし、別の会社で売っていれば、自社の顧客は別の会社からも買うことになるでしょう。繰り返しになりますが、この理屈は容易に理解できることなのですが、「幕の内弁当」を売らないようにすることは、「冒険」でもあるので、「幕の内弁当」を販売しないという決断をできないことも少なくないようです。

ちなみに、銀行出身のコンサルタントである私にとって、「幕の内弁当」は、「融資申請支援」、「資金調達支援」でした。融資申請支援は、ある程度の需要があるので、仕事を受託できる見込みも少なくありません。でも、同じような支援をする「専門家」はたくさんいるので、私が「融資に強いコンサルタントです」と名のると、金額や条件面で採算をとることが難しくなります。そこで、私は、「銀行から融資をセールスされる会社になるための支援の専門家」と名のるようになりました。こう名のれば、同じようなことをできる専門家は少なく、競争力が高くなるし、専門家への依存心の高い経営者からの支援の打診もなくなりました。

2021/12/16 No.1828

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