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管理型経営から委任型経営で業績を改善

[要旨]

社長が管理型で経営に臨むと、従業員の方は受動的な活動を行うようになるため、十分な力が発揮できなくなります。そこで、現場の意見をくみ取るための会議を開催することで、従業員の方は能動的な活動を行うことができるようになり、その結果、業績の向上にもつながります。


[本文]

大阪府高槻市にある運送会社の社長、宮田博文さんのご著書、「社長の仕事は社員を信じ切ること。それだけ。」を拝読しました。宮田さんの会社では、2013年に死亡事故が起きましたが、それは、社長である宮田さんが、従業員に対して、売上目標や利益目標を過大に負わせていたことが原因であったと、宮田さん自身が感じ、それをきっかけに、その後は、従業員の方に対して性善説で接するように方針転換したそうです。具体的には、従業員の方が、やる気を出してがんばれる環境や機会をつくるために、みらい会議という会議を、毎月、開くようにしたそうです。

あるとき、その会議で、月に3万枚のパレットを洗うという業務が滞っているという議題があがったそうです。従来の幹部会議でこの議題があがったときは、担当所長が叱責され、改善を求められても、ずっと解決できなかったそうです。しかし、その時は、参加していたパートタイマーの「おばあちゃん」が、「社長、3万枚なんて簡単や、私、明日、現場に行って、みんなに言うから大丈夫や」と、解決を引き受けたそうです。宮田さんは、この言葉に半信半疑だったそうですが、1か月後、この課題は解決したそうです。

では、なぜ、「おばちゃん」がその課題を解決できたのかというと、会議に参加していた「おばちゃん」は、会議で配られた資料を見て、パレットを洗うことがなぜ大切なのかを理解し、パレットを洗うことは、荷物を送る側も受け取る側にも大切なことだと腹落ちしていたそうです。そして、それを現場の同僚に伝えたところ、みんな、能動的にパレット洗いをするようになったということです。

ちなみに、宮田さんの経営手法を、管理型から委任型に変えた結果、売上高は、宮田さんが社長に就任した2012年の25億円から、2019年には40億円に、経常利益は2012年の1,000万円から、2019年には1億5,300万円に増加したそうです。このような、従業員の方の参画意識を高めることができる「みらい会議」は、5S活動や、QCサークル(小集団活動)でも同様の効果が得られるため、私も顧問先の方に5S活動やQCサークルの実施をお薦めしてます。

ただ、このような活動は、一朝一夕では効果を得ることができないので、経営者の方の多くは、あまり関心を示しません。とはいえ、従業員の方の、本当の力は、自主的に動くことで発揮されます。時間はかかっても、従業員の方の潜在能力を発揮できるような環境や機会をつくることは、経営者の方の重要な役割です。そして、それが奏功すれば、ライバルに対して、業績で大きな差をつけることができるようになるでしょう。

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