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パーキンソンの法則の第2法則

[要旨]

業績があまりよくないときに、会社の財務情報を直視することは、経営者の方にとってつらい面もあります。しかし、どんぶり勘定のままでは、適切な資金管理を行うことができないばかりか、銀行に対しても十分な説明を行うことができず、融資の支援を受けることが難しくなります。

[本文]

今回も、中小企業診断士の渡辺信也先生のご著書、「おたく以外にも業者ならいくらでもいるんだよ。…と言われたら-社長が無理と我慢をやめて成功を引き寄せる法則22」を拝読し、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、経営者の方は、過去に成功した事例を持っていると、それを維持しようとしてしまうために、経営環境の変化に応じて変化することに躊躇し、業績を下げてしまうことにつながるので、注意が必要ということを説明しました。これに続いて、渡辺先生は、数字を直視することが重要ということについてご説明しておられます。

「うまくいかないときの数字をみることはつらいことです。でも、数字は直視しなくてはいけません。数字は正直です。今の状態を示してくれます。数字を見ないでいると、どんぶり勘定にななります。どんぶり勘定では、きっとお金が入ってくるはずだ、出ていくお金は少ないはずだ、という不思議なプラス思考になります。パーキンソンの法則の第2法則というものがあります。

これは、『支出の額は、収入の額に達するまで膨張する』というものです。つまり、収入が増えたら、それに見合って支出も増えるようになるということです。お金がたくさん入ってきたら、嬉しくて使ってしまうということもありますね。しっかり管理する金庫番の方がいないと、お金はどんどん出て行ってしまいます。つまり、数字を見るのを怖がって、直視しないでいると、現預金はどんどん減っていきます。

では、数字を直視すると何が見えるでしょうか?ひとつは、意外に儲かっていない現実を知ってしまいます。そして、現預金が減っていくという現実を見せつけられてしまいます。さらには、お金を借りに銀行に行くと、きかれたことに答えられず、どうなっていくんだろうという恐怖心がMAXになってしまいます。こうした混乱から、結局のところ、何をしていいかわからなくなることもあります」(40ページ)

私が中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験からも、渡辺先生が述べておられるような会社は少なくない、というより、多数派になっていると感じています。そうなってしまう原因は、中小企業の経営者の方は、事業活動が目的なっていたり、事業活動に携わることで満足してしまったりするからだと、私は考えています。もちろん、その結果、会社の事業が赤字になってしまえば、事業を継続できなくなることは誰にでもわかるので、多くの経営者の方は、「そんなことするはずはない」と否定すると思います。

しかし、前述のように、数字の管理をしていない会社が多いというのは現実のようです。では、どうすればよいのかというと、私は、経営者の方の役割は、事業を維持・発展させることが最大の役割だと認識することだと思います。以前も、仕事が少ないときに、不採算の仕事を受注して、なんとなく安心するという誤った対応をする例が少なくないということを述べましたが、これと同様に、数字を直視することを避けるために、事業活動だけに関わり、「自分は経営者として懸命に取り組んでいる」と、自分を納得させている面も透けて見えます。

2023/3/31 No.2298

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