経営計画を個人の実行計画に落とし込む
[要旨]
阪神佐藤興産では、経営計画書を個人の実行計画まで落とし込み、それを3か月ごとに検証しながら、従業員の方のモチベーションを高めているそうです。その結果、同社の従業員の方は、会社の経営計画において、目標達成のために、自分は何をすべきかを考え、コミットメントできるようになるといった成長が見られたそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、阪神佐藤興産の社長の、佐藤祐一郎さんのご著書、「小さくても勝てる!~行列のできる会社・人のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、佐藤さんは、自社をサービス業と捉え直しましたが、それに対応して、お客様との接点である社員のレベルを高めていく必要があると考え、毎週、部門ごとに開く会議で、社員から顧客の要望を発表してもらい、それに対して上司が助言をするということを繰り返し、レベルの向上を図っていったということを説明しました。これに続いて、佐藤さんは、経営計画書を個人の実行計画まで落とし込み、それを3か月ごとに検証しながら、従業員の方のモチベーションを高めているということを述べておられます。
「(当社で実施している)『PM(ポテンシャル&モチベーション)研修』は、経営計画を、個人レベルに落とし込むものです。研修の内容は、経営計画書に沿って、部門の実行計画から個人の実行計画までを作成するというものです。かつては、会社の経営の方向性と個人の方向性、また、上司と部下のコミュニケーションにズレがあり、その擦り合わせに時間がかかっていました。そのため、合宿形式で行っていましたが、今は、そのようなことが少なくなり、1日で効率よくつくれるようになった。実施時期は、3か月に1回で、年4回。当社は11月決算なので、12月、3月、6月、9月に行うようにしています。
12月に作成した個人の実行計画を、PDCAを回しつつ、3か月に1回、ブラッシュアップしていきます。当初は、『そんなことをやらなくても構わない』、『給料分をちゃんと働けば、それでよし』などと、我関せずの社員がいたことも事実で、定着には時間がかかりました。しかし、会社として経営計画を明確に示し、そこから落とし込んだ自分の実行計画に、社員がコミットメントできるようになり、自ずと、『では、その計画において、目標達成のために、私は何をすべきか』と考えるようになってきました。このようなコミットメントができるようになったことは、社員が成長したことの証とも言えます」
事業計画を作成することのメリットは、佐藤さんが述べておられるように、会社の目標が明確になるので、そこから、各部門や各従業員の目標や活動内容が明確になることです。事業計画の作成について否定的な経営者の方は少なくないですが、そのような方たちは、将来のことは分からないのだから、計画を立てることに意義を感じないと考えているようです。しかし、佐藤さんの説明からも分かるように、事業計画は、会社、各部門、各従業員の目標や行動を明確にすることであり、それに向かってコミットする(積極的に活動に臨んで。目標の達成を約束する)ことを可能にすることです。
言うまでもありませんが、目標が漠然としている会社より、目標が明確であり、行動すべき内容が明確な会社の方が、活動が効率的であり、目標を達成することも容易になるでしょう。ただ、この、事業計画を作成することは、労力が必要なことは確かです。だからといって、事業計画を作成せず、成行的な活動を続けていれば、ライバルとの競争に敗れてしまいます。したがって、地味な活動に思われる事業計画策定と、それに基づいた活動の定期的な振返りは、社長を始めとしたマネジメント層にとって、競争力を高めるために重要な管理活動ということができます。
2023/12/15 No.2557
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