見出し画像

『行列のできるリフォーム会社』になる

[要旨]

阪神佐藤興産では、従業員のスキル向上によって、継続的な受注ができるようになったことから、粗利益率を高めて来ましたが、大手建設会社の30%には及んでいません。そこで、1億円未満の小口の受注に絞り、顧客満足度を高めることによって、粗利益率を高めることを狙っているそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、阪神佐藤興産の社長の、佐藤祐一郎さんのご著書、「小さくても勝てる!~行列のできる会社・人のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、阪神佐藤興産では、粗利総額を最大化するために、粗利率よりも粗利額を重視しており、具体的には、1億円の工事で、粗利里10%、粗利額1,000万円の工事と、1,000万円の工事で、粗利率30%、粗利額300万円の工事なら、粗利率が低くても粗利額の多い1億円の工事を撮るようにしているということを説明しました。

これに続いて、佐藤さんは、阪神佐藤興産の粗利益率は、大手建設会社と比較すると高くないということを述べておられます。「大手と比べて、(当社の)利益率はどうか。細かな数字は、他社のことでもあり、省きますが、大手建設会社における現場経費率、本社経費等を加味して、単純に請負金額から外注費を引くと、大手の粗利益率は30%を超えています。ざっくり言うと、当社は元請として、しっかりと利益を上げられる体質にしようと頑張っていますが、利益率は建設大手にはまだまだ及びません。大手と競合したときに、当社が受注を獲得できると言う意味では勝っていても、粗利益率の実態としては、まだまだなのです。

逆に言えば、大手ゼネコンにとって、億円レベルにならないような改修工事だと、面倒であり、大した儲けにならないので、他社にやってもらってもいっこうにかまわない……、そのようにお考えなのかもしれません。大手ゼネコンの意向はともかく、わが社としてどうするべきなのか?答えは、お客様に本当に満足いただけるリフォーム会社になれば、自然と粗利益率は上がる、私はこのように考えています。阪神地域で、『行列のできるリフォーム会社』になる、これが私のビジョンです」

佐藤さんは、大手建設会社の粗利益率が高い理由について、直接的には述べておられませんが、それは、大手建設会社は知名度が高いので、大規模工事の受注が比較的容易であること、そして、大規模工事は経費率が低くなることだと思います。これに対して、佐藤さんは、顧客満足度を高めていけば、大規模でない工事であっても、利益率を高めていくことができるであろうから、それを目指して行くと考えておられるようです。これは、「ポーターの3つの基本戦略」のうちの、「集中戦略」と言えると思います。(ちなみに、残りの2つは、「コスト・リーダーシップ戦略」と、「差別化戦略」です)

この集中戦略とは、競争の範囲を狭い範囲に絞り、競争を展開する戦略です。阪神佐藤興産の場合、小規模の工事に競争を絞るということでしょう。もちろん、現在は、必ずしも、集中戦略だけで、優位に競争に勝てるとは限らないでしょう。同社の場合、従業員のスキルを高めることで、さらに差別化を図っています。そして、集中戦略とかけ合わせることで、スキルアップの効果が相乗的に高まることになるでしょう。そういう面で、集中戦略は肝となる戦略であると言えます。

2023/12/19 No.2561

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?