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【読書感想文】有川浩/植物図鑑


 高校時代はライトノベルをよく読んでいた。同級生で好きな人間がいて影響されたというのが大きかっただろう。「涼宮ハルヒの憂鬱」をはじめ、「半分の月が見える空」や「バッカーノ」などが面白かった。アニメで「灼眼のシャナ」を見たりした。その中の一人が有川浩で、電撃文庫でブレイクしたと記憶している。
 そのあとしばらくしてから「図書館戦争」を映画で見た。恋愛中心だったが、言論の自由をテーマとした戦いというのはとても面白いと思ったし平成にならなかった世界の日常を描いていたのが美しかった。セカイ系と呼ばれる作品は「雲のむこう、約束の場所」(新海誠監督作品2作目)ぐらいしかちゃんと見たことはないが、平成にならなかった世界の日常という意味ではこれもセカイ系といえるのかなという感じだった。岡田准一と榮倉奈々のキャスティングもぴったりはまっていた。そして似たような男女の恋愛を描いた「シアター」だったり「県庁おもてなし課」というのを読んだりしていた。
 そんな有川浩作品で一番面白かったのは「植物図鑑」である。アジカンのジャケットに似ているなぁというところから気になって購入したが、とても面白かった。(似ているが違う人だったらしい。「植物図鑑」はカスヤナガト。中村祐介といって「夜は短し歩けよ乙女」などで有名な森見登美彦の本のイラストが多い。)

 あらすじとしてはOLのさやかが野草類に詳しいイツキを“拾って”一緒に暮らす、ということだが、イツキが野草を観察するのが好き、というのが高じて調理まで出来るようになっていて彼が腕を振るう場面が良く出てくる。それ以外は男性が見ても思わずきゅんとしてしまうようなアラサー女子の純情さが表現されていて、感情移入できるポイントも多い。
 物語以外のところでいうと、ふきのとうの天ぷらなど、美味しそうな描写が出てくるのが特徴で、読みやすい上に自然に関する知識をつけることが出来てなかなか興味深い作品だった。イラストも可愛くて、イツキが漕ぐ自転車のうしろにさやかが乗る描写なども青春を感じさせる。

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 もとは2008年に角川書店のケータイ小説サイトで連載されていたものらしい。ケータイ小説という響きが懐かしいが、こんなにいい物語があるということはそういうジャンルも侮れないと思った。

 ”少しでもイツキに繋がる記憶はずっと抱えて離したくない。"



 最近出会った女性がこの本が有川浩の作品で一番好きらしく、ハードカバーで所持しているということだった。今時そういう女性に会うことも珍しく、素敵な女性だという印象を受けた。それと同時に、自分も学生時代のように大事に想っている人と川辺で野草や自然の景色を眺めながらゆっくり過ごす日々がまた来ればいいなと思った。(これは余談)

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