小説・小丸との日々(第8話・ん?)

「はあ・・」
 ため息をつく。ため息しか出なかった。鬱が鬱を呼び、どん底がどん底を呼ぶ。
「死にたい・・」
 いっそのこと死んでしまいたかった。生きているだけで、一日一日お金が消えていく。もう絶望だった。なんの希望も光も見えなかった。
「・・・」
 私は洗濯用ロープを握っていた。
「・・・」
 死ぬのか。死ぬのか私。私は自分に問いかけていた。
 そんな私の前を小丸が横切っていった。
「ん?」
 私は、小丸を見た。
「・・・」
 私は目をパチクリさせる。
「あれ?」
 何か変だ。小丸の背筋が伸びている。上に。
「・・・」
 小丸は二本足で歩いていた。
「・・・」
 私はさらに目をぱちくりさせて、そんな小丸を見つめる。確かに二本足で歩いている。
「猫って二本足で歩くものだっけ?」
 私は首をかしげた。その日私は、とりあえず持っていた洗濯ロープを手から放した。
 そして、次の日、私が病院から帰って来ると・・。 
「おかえりなさい」
 小丸はしゃべり始めた。
「・・・」
 丁寧にお辞儀までしている。
「猫ってしゃべるものだっけ・・」
 ついに私は幻覚を見てしまっているのか?幻聴を聞いてしまっているのか?私はなんだかくらくらしてきた。


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