小説・小丸との日々(第9話・困惑)

「お前しゃべれるの?」
「はいにゃ」
「・・・」
 どうやら幻覚や幻聴ではないらしい。私はホッとした。いや、ホッとしている場合ではない。
「なんでしゃべれるの?」
「なんでかにゃ?」
 小丸も首をかしげている。
「どうやって言葉覚えたの」
「テレビにゃ」
「なるほど・・」
 日がな一日、憂鬱な私は、カーテンを閉め切って一日中テレビをつけっぱなしにしていた。
「・・・」
 しかし、やっぱり何か違和感を感じる。猫が二本足で歩いたり、しゃべったりするなんて・・。
「う~ん」
 私はこれをどう受け止めていいのか困った。そんな私を、小丸はそのまん丸いキラキラした目で見つめている。
 しかし、不思議なもので、一緒に暮らしていると、小丸が二本足で歩くのもしゃべるのにも慣れてきた。
「まっ、いっか」
 よく考えれば別に困ることはなかった。私は新しい小丸を受け入れた。私は変なところだけ大らかだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?