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雇調金不正受給の「連帯責任」とは――厚労省が要請文書|迷想日誌

数次の緩和措置が続く雇用調整助成金が注目されていますが、確かに手続きが煩雑で、中小事業主にとっては、申請にまで漕ぎ着けないケースが多いの実態です。
しかも、申請手続きの代理人である社会保険労務士が、手続き上何らかの不備があった場合の「連帯責任」を問われる可能性を懸念して、代理を回避しようとする動きもあるようです。

実は、雇用保険法施行規則に次のような条文があります。
偽りその他不正の行為により雇調金支給を受けた事業主に対し、都道府県労働局長は、その者に返還を命ずることができ、また、偽りその他不正の行為により支給を受けた場合は、返還を命ずる額の2割に相当する額以下の金額の納付を命ずることができる。

その際、代理人(社労士など)が偽りの届出、報告、証明等を提出した場合は、その代理人に対し、その支給を受けた者と連帯して、返還または納付を命ぜられた金額の納付を命じることができる(公表制度もあり)。

さらに、過去5年以内に偽りその他不正の行為により支給を受け、もしくは受けようとした事業主には助成金を支給しないものとする……。(以上要旨)

今回、新型コロナウイルスにより新しく雇調金を申請しようという事業主が激増しましたが、社労士としては、記載に不備が発覚した場合を心配し、躊躇している例が少なくないというのです。

これに対し厚生労働省は、「積極的な支援」を求める文書を職業安定局長名で発出し、社労士会に説明したとしています。
その文書では、不正受給が発覚した際の社労士に対する連帯責債務の設定や5年間の申請不受理の措置については、「故意に不正の行為を行うことがなければ適用されない」と念を押すように明記しています。
そして、雇調金の相談に来る事業主に対し、申請についての手続き支援を積極化していただきたいといっています。

本来受給できないはずの助成金を、社労士が不正行為を指示したり、黙認するなどして受給させた場合の連帯責任は以前からのもので、強化されてきました。
「故意」がなければ、責任はないとしていますが、当然といえるでしょう。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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